641:過去回想 ページ45
事の発端は、双子の会話がきっかけだった。
女執事はその日、様々な理由で他の執事達が出払っていたため、たった一人で双子の様子を監ていた。
通常、彼らを監る時は執事が三名つく事になっている。
一人は、長男であるイルミを。
もう一人は、長女であるAを。
そして残りの一人は、なんらかの理由で執事の片方または両者が死亡した場合真っ先に連絡をとるために。
まだ善悪の理解が乏しい子供だ。
特に、ゾルディックでの教育を受けている時点で、彼らがまず他者へ向けるのは殺せるか殺せないかということ。
とはいえ、往々にしてその体制がとれない場合がある。
彼らの教育係でもベテランでもない女執事は、一人で任される事に一抹の不安を抱いていた。
だが、いざ監てみると、いくら暗殺の英才教育を受けているとはいえやっぱり普通の子供と変わらないじゃないか。
おてんば娘と名高いAと、その片割れの後ろをついて歩くイルミ。
かくれんぼ、おにごっこ、草花の観察、昆虫採取。
この子供達に三人も大人が?
彼らを眺めている中で、女執事は思った。
まだ四歳の子供じゃないか。
背丈も全て自分より小さい。
教育を受けているのは、彼らだけじゃなくて自分もだ。
主を護る為、日夜鍛錬を重ねている。
執事達が言う監視中の死亡とは、大抵が雇用主からの殺害を指すのだが、この幼き双子に殺害されるのはやはり考えにくい。
「イル、私本で読んだのよ」
舌っ足らずな口ぶりと、少女特有の甲高い声が女執事の意識を現実に戻した。
「最初は、土の中に小さくなって埋まっているの」
Aが、花壇の前でしゃがみ土を指さしながら言った。
花壇の前には『アネモネ』とこれから咲くであろう花の名称が書かれた札がかかっている。
あぁ、花の話か。
女執事はそう思って、彼らを眺める。
「それで、どうやって花になるの?土を掘ったら花が出てくる?」
「ううん。まずは、葉っぱが二つ出てくるの。ぽこんって」
ぽこん。
可愛らしい擬音と共に、Aはイルミの前で両耳手を広げる。
「それでね、えっと、うんと。大きくなって花が出る」
だいぶ端折ったな。
Aの言葉を聞きながら、女執事がその可愛らしさに朗らかな笑みを浮かべた。
言葉はかなり足りていなかったが、弟のイルミはえらく感銘を受けているようで、猫のように丸く黒い瞳をぱっちりと開きながら「姉さん、やっぱり物知りだね…!」と声を上げた。
問題は、そのあとであった。
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マニ。(プロフ) - 鼻毛太郎さん» ✉️。こっちのHUNTER×HUNTERの作品も最高に好きです!ヒソカと夢主ちゃんがいつ結ばれるのかも楽しみです💖 (2月18日 13時) (レス) id: f769238e4f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 伊波トウナさん» コメントありがとうございます!🙌かれこれ今年で4年となる、まるで作者耐久レースでもしてんのかってぐらい長期連載ですが、俄然暗黒大陸までやる気ですのでぜひ気長にお楽し頂ければ幸いです!!🩷️💙 (1月12日 19時) (レス) @page44 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - とても面白くて一気見してしまいました!本当に面白かったです!続きが今も更新されてるって知った時マジでガッツポーズしました。更新頑張ってください!楽しみにしてます! (1月12日 18時) (レス) @page44 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 好き好き症候群さん» コメントありがとうございます!😭🤍文字量も章も多いというのによくぞここまで…!ペースはまちまちなのですが、更新は続けていきますので是非また遊びにいらしてください😌 (1月6日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
好き好き症候群(プロフ) - コメント失礼します〜!先程、作品を読み切ったのですが最高でした😖😖文章もかなり凝っていて、読みやすかったです!久しぶりに神作品に出会えて嬉しいです🥲🥲更新を楽しみに待っています🙇 (1月6日 8時) (レス) id: da48891b6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年10月15日 14時