【H×H】赤ちゃんはどこからくるの？-13-

634：ぐぬぬ ページ38

それでも、Aにそんな気を一切抱かなかったのは、それがAという人間から出た言葉だからだろう。

特別な感情を持ってるからはさて置き、この自分の弱いところを見せたのがAという人間であるところが肝心なのだ。

数多の善という概念を持つ人間がいる中で、その一線から最も乖離している人間にAは自分の太い動脈を見せた。
絶対に他人に弱いところを見せないような人間が、この自分に。

出会ってからそういう瞬間が徐々に増えていっているのは、Aが自分に溺れていっているからか。
それとも、自分がAに溺れていっているのか。

二人で絶対に抜け出せない砂漠の蟻地獄に身を埋めることになったら、それはさぞ楽しいだろうな。

弱気になるAの横で、失礼にもヒソカは笑みを浮かべそうになった。



完全無欠最強無敵、冷酷無慈悲で鮮やかで艶やかな孤高の殺し屋。
その実、彼女の心臓に手を突っ込んでいくと、しっかりと人間らしい生暖かさがあるというところが堪らなくいい。



そして、その人間性に更に人間的な要素を教えてやるのが自分なのかと思うと。


「ふ、くく…っ」

「…何。馬鹿みたいな悩みだなぁって？」

Aが睨むも、これにはヒソカも笑いが堪えきれなかったようで、片手で笑みを抑えようとするもやはり笑いが零れてしまう。

それも、一度蓋が外れたら後は溢れるだけというわけで。

ヒソカは珍しくも声を上げて、額まで抑えて笑っていた。
これには旅団の面々も気づき、ヒソカの方へ目を向けては「アイツあんな感じに笑う時あるんだ…」と意外と奇怪が混ざった視線を向けた。

Aはと言えば、途端に恥ずかしくなって、今度は羞恥に顔を赤くさせ「む、ムカつく〜〜！！！」と声を上げた。

「なによ、そんなに面白かった！？これで貴方の爆笑かっ攫って、はいAちゃんお笑いの才能ありますね〜なんて言い出したら外の木に吊るしてやる…干物にして酒の肴にしてやる…！！」

「明日の天気雨だよ♧」

「…殺しちゃる………」

生かしておけん。
ぐぬぬ、と悔しげに歯を食いしばるAに、ヒソカはニヤニヤと笑みを浮かべて、内心「あーA揶揄うのが一番楽しい♡♡」と悦に浸っている。

無論、Aはヒソカの表情からそれを察している。

はちゃめちゃに悔しい。

Aは、キッとヒソカを睨むとその場で仁王立ちをし、ヒソカへ人差し指を突きつけた。

「大体、私がこんな感情になってるのは、ヒソカ君のせいで＿＿＿＿、」

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