【H×H】赤ちゃんはどこからくるの？-13-

629：スーツ ページ33

「私そんな無防備に見えるかしら」

自分の顔をむにむにと触ってみる。
割かし大人っぽい顔をしていると思っているし、正直言って自分の顔は黙っていると結構キツい顔だと思っているので、隙だらけだとは思えないのだが。

「違うと思うけどね…♧」

顔のすぐ横から、低くもなく高くもなく、しかしクセのある声音がそう言った。
と、言いますと。Aが不思議そうな顔を向けると、件の男であるヒソカは何も言わずにニコリと笑うと、Aの髪をくしゃくしゃと無造作に掻き混ぜた。

「ちょっ、何よ急に髪ぐしゃぐしゃに＿＿＿＿ヒソカ君、なんでスーツ着てるわけ？」

乱れた髪を直しながら、今一度ヒソカを見ると、闇に紛れていて気づかなかったが彼はスーツを着込んでいた。
普段の派手な格好とは正反対なものの、顔立ちの良さも相まってやたらとブラックスーツが似合っていた。

メイクもしていない、切れ長の瞳がAを捉えると細く弧を描く。

「顔がボクは割れてないんでね。万が一出ろって言われた時のためさ♢ボクってほら、顔がいいから♡」

「はいはい、嫌ってほど見てるから知ってるわよ」

呆れたように言いながら、Aは肩に回されたヒソカの腕をやんわり退かす。
Aが褒めてくれる言葉も、いつしか呆れ混じりに変わってしまい、ヒソカは「新鮮味がないなぁ…♤」と残念そうに肩を竦めた。

「ヒソカ君、変装とかもいけるんじゃない？かなりいい線いくと思う」

「くく、君に褒められるのは悪い気しないね♧寧ろ、気分いいよ…♤今度君がセッティングしてよ。君となら、そういう仕事してもいい♡」

君となら。

その言葉に、ぐんと体が熱くなる。
特別扱いされるのは別に今が初めてではないし、彼の中で自分が特別な立ち位置に居るというのは傲りとかではなく、そういうものなのだと彼の悩める性癖を踏まえ理解している。
それも、ずっと前から。

なのに、どうして今になって特別扱いされているという事に体中が火照るような気を覚えるのだろう。

まだ慣れていないのか、この恋人という関係に。
いやいや、何を今更。

Aは、温くなった珈琲を啜る。

「…ねぇ、ヒソカ君」

「ん？」

小首を傾げる姿が、格好相まって妙に様になって見えるのは何故だろう。
彼の内面を知らなければ、コロッと落ちてしまう人間は数多居るんだろうなとAはふと思う。

まぁ、私は内面を知っている上で落ちているわけなんだが…。

どうかしているな。

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