622:埒があかん ページ26
二人の間が沈黙で埋まっていく。
ゼノは、Aの交友関係に口を出すつもりは更々ないらしく、既に「あー、疲れた」と口にしながら出口へと向かい始めていた。
「…」
こめかみを親指の腹で押すシルバ。
そして、その後深いため息を吐き出すと、漸く沈黙を絶った。
「昔言ったことを忘れたか?」
「いいえ、覚えてるわ」
シルバの問いに、Aはしっかりとした声音で返す。
「だけど、私が誰と付き合うかは私が決める」
シルバの瞳がAを真っ直ぐと捉える。
Aは父親の瞳から一切目を逸らさなかった。
この議論の渦中は自分だと思うと、Aの隣で佇むクロロは何処かむず痒い気持ちであった。
まさか、ここでヒートアップして喧嘩でもするんじゃないだろうか。
半ば危機感を抱き始めていると、シルバが本日二度目のため息を深く吐き出した。
「…分かった」
その一言に、Aの顔がぱっと明るくなってクロロへと顔を向けた。
言葉では言わずとも、「良かったわね!」と顔が物語っている。
まるで、悪い友達との付き合いを許された子供だなとクロロは思った同時、まるでじゃなくて事実かと思い直す。
「もう何も言わん。どうせ言ったところで、お前の頑固さはこっちの骨が折れる」
「それに、Aの人生はもう父親がどうこう言う年齢じゃないじゃろ」
ゼノが遠くから述べると、シルバはじとりとゼノに目を向けた。
こんな危なっかしい娘なんだぞ、うちじゃ一番に生まれて、それに女の子だぞ。
当のゼノはそれを知ってか知らずか疲れきった顔で「はよ帰るぞ」とシルバを急かした。
「ほら、父さん帰らないと。母さんが夕飯作って待ってくれてるんじゃない?」
「煩い、放浪娘」
「拗ねちゃった」
肩を竦めるAに対し、もう知らんとシルバは踵を返す。
仕事も終われば埒もあかないので、この場から去ることにしたらしい。
とはいえ、何処かまだ緊張感の抜けないクロロは、彼の背中が扉の向こうに消えるまで眺めていた。
ふと、その時だ。去り際、シルバが横顔を向けたかと思えば、彼の瞳は間違いなくクロロを見ていた。
鋭い、大型の狼のような瞳。
Aよりもイルミよりも何十倍にも鋭いその瞳に、クロロはすぐさま察する。
余計な真似をすればってやつですか
Aにも、ゾルディック家にも。
クロロは、底まで黒い瞳を彼が扉の奥へと姿を消すまで逸らさなかった。
閉まっていく扉の音が、張り詰めた空気を緩めていった。
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マニ。(プロフ) - 鼻毛太郎さん» ✉️。こっちのHUNTER×HUNTERの作品も最高に好きです!ヒソカと夢主ちゃんがいつ結ばれるのかも楽しみです💖 (2月18日 13時) (レス) id: f769238e4f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 伊波トウナさん» コメントありがとうございます!🙌かれこれ今年で4年となる、まるで作者耐久レースでもしてんのかってぐらい長期連載ですが、俄然暗黒大陸までやる気ですのでぜひ気長にお楽し頂ければ幸いです!!🩷️💙 (1月12日 19時) (レス) @page44 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - とても面白くて一気見してしまいました!本当に面白かったです!続きが今も更新されてるって知った時マジでガッツポーズしました。更新頑張ってください!楽しみにしてます! (1月12日 18時) (レス) @page44 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 好き好き症候群さん» コメントありがとうございます!😭🤍文字量も章も多いというのによくぞここまで…!ペースはまちまちなのですが、更新は続けていきますので是非また遊びにいらしてください😌 (1月6日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
好き好き症候群(プロフ) - コメント失礼します〜!先程、作品を読み切ったのですが最高でした😖😖文章もかなり凝っていて、読みやすかったです!久しぶりに神作品に出会えて嬉しいです🥲🥲更新を楽しみに待っています🙇 (1月6日 8時) (レス) id: da48891b6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年10月15日 14時