614:恋とは患いなのだ ページ18
もにもに。
という音は流石に聞こえなさそうだが、Aは掴んだヒソカの掌を両手で何か確認でもするかのように揉んだり、指を絡めたりしてくる。
何してるんだ。
と思う中、今度は手を伸ばして不躾に頬を触ったり引き伸ばしたり、それ以外にもあちこち触診だと言わんばかりに触れてくるではないか。
その謎の行動に、ヒソカは疑問符を幾つも浮かべて、ただAの手を目で追うばかりであった。
暫くしてAの両手が離れて、自然とヒソカはAへ目を向けた途端。
「!?」
Aの表情にぎょっとする。
今まで、彼女のこんなにも分かりやすい『どうしよう』と切羽詰まった表情を見たことがあっただろうか。
羞恥なのか、泣き出しそうなのか。湯気が出そうな程、頬と鼻先、耳までも真っ赤にさせて、口をきゅっと引き結び、目には薄い水膜が張られている。
「A、」
何、どうしたの。
何か痛いとこでもあるの?
Aに限ってそんな事があるわけないのに、その表情に思わず焦りを隠せずヒソカはAの頬へ手を伸ばしかけた時、Aがぼそりと言葉を吐き出した。
「…心臓破裂する」
「は?」
あまりに小さかったので、ヒソカは改めて訊ねようとしたのだが、口を開くよりも早くAがヒソカの腕を引いた事で遮られてしまう。
「A?あれ?ねぇ、Aー?」
どこかへ連れて行こうとはしているのだが、それ以外は何も分からない。
というか、もはや反応一切示さず。
うーん、Aってば。
「たまにあるよねぇ、君の奇行♢何故か君が取り乱してるのはこの際置いといて、いやぁそれにしてもさっきの顔、不覚にもドキリとしちゃったなぁ♤君ってば本当______、」
まさか、これが最後の言葉になるとは到底思ってもいないわけで。
「え?」
気づいた時には、ヒソカは既にビルにはいなかった。
というか、正しくは突き落とされたあとであった。
落下する前の空中で浮遊する数秒間が、この時ばかりは数分にも感じられて、しっかり床に足をつけているAと顔を合わせたが特に助けてくれそうな様子もなく。
嘘だろ、と思った頃には時間切れの合図。
無慈悲にヒソカはAの前から物理的に姿を消すことになったのであった。
超高層階。
割れた窓から吹き込む風を受けながら、Aはまだ火照った顔のまま胸を押さえてみる。
まだ心臓が煩い。
たった弾みで出てしまった言葉が、まさか“原因”だと気付かされるなんて。
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マニ。(プロフ) - 鼻毛太郎さん» ✉️。こっちのHUNTER×HUNTERの作品も最高に好きです!ヒソカと夢主ちゃんがいつ結ばれるのかも楽しみです💖 (2月18日 13時) (レス) id: f769238e4f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 伊波トウナさん» コメントありがとうございます!🙌かれこれ今年で4年となる、まるで作者耐久レースでもしてんのかってぐらい長期連載ですが、俄然暗黒大陸までやる気ですのでぜひ気長にお楽し頂ければ幸いです!!🩷️💙 (1月12日 19時) (レス) @page44 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - とても面白くて一気見してしまいました!本当に面白かったです!続きが今も更新されてるって知った時マジでガッツポーズしました。更新頑張ってください!楽しみにしてます! (1月12日 18時) (レス) @page44 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 好き好き症候群さん» コメントありがとうございます!😭🤍文字量も章も多いというのによくぞここまで…!ペースはまちまちなのですが、更新は続けていきますので是非また遊びにいらしてください😌 (1月6日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
好き好き症候群(プロフ) - コメント失礼します〜!先程、作品を読み切ったのですが最高でした😖😖文章もかなり凝っていて、読みやすかったです!久しぶりに神作品に出会えて嬉しいです🥲🥲更新を楽しみに待っています🙇 (1月6日 8時) (レス) id: da48891b6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年10月15日 14時