611:逃げられると思うなよ ページ15
漸くヒソカの方も溜め込んだ息が切れてきたのか、口を離し呼吸を整える。
当然だが、Aとヒソカの肺活量は全く違う。
殺し屋の英才教育を受けたAであれど、根本のフィジカルが違うヒソカに肺活量で適うわけが無い。
後半半ば窒息するかしないかのラインを行ったり来たりしていたAは、口が離されると漸く解放されたと音が鳴るほどの呼吸を何度も繰り返した。
舌をしまう余裕さえもなくし、まだたらりと細い涎が伝ったまま肺に空気を送る。
急に体の力が抜けて、血だらけの床に座り込みそうになると、はっとAの状態に気づいたヒソカが急いで支えた。
「あ、いや…、あー、うん、今のはボクが悪い。はい、そうですボクが悪いです♢理性をコントロール出来なかったボクが悪いけど、いやでもAもほら抵抗してくれたって、」
ほいほいと言い訳が出てくる最中で、何も言い返してこないなとふと思いAへちらと目を向けると、ヒソカは思わず目が零れるんじゃないかと言うほど剥いた。
「は…、は、っ」
呼吸を整えるA。
口の周りは、血と唾液が混ざり合いぐっしょりと濡れていた。
血が沢山巡り出したからだろうが、顔が赤らんでいる。
瞳は濡れた膜を張り、目尻に涙が溜まっていた。
そのくせ、こちらを睨んでくる訳ではなく、まだ先程の余韻が残っているからか瞳がとろんとしていた。
「かわ…ッ!!?」
その姿、まるで事後を思わせる表情で、ヒソカは思わず自身の口を可愛いと発しかけたのを抑え込んだ。
いやいや、Aってば実際は完全に仕事モードだっただろうし、それを二度も邪魔されれば流石のAもキレる。
寧ろ、今ここで長居すること自体が無用。
正気に戻った時、あまり調子に乗るなよカスと言われ、常人なら気絶するレベルの強目のビンタを喰らう事になるのをヒソカは誰よりも理解している。
そうと分かれば、さっと両手をあげて体を離し「ぼ、ボク、君の仕事の邪魔するわけにもいかないし…じゃ、じゃあこれで♧」と去る事に決める。
そういえば、こんな展開前にもあった気がするなと、そろりと一歩ずつ退き踵を返した時ヒソカの頭にふと過った。
瞬間。
「おい、ちょっと待ちやがれ」
Aだとは思えないほどドスがかった声音。
彼女の片手が、ヒソカのヒラリとした裾をがしりと掴み、思わずヒソカは引っくり返りそうになる。
今、かなり本気で引っ張ったろと思いつつも、珍しく身の危険の方が勝ったのは言うまでもない。
1120人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マニ。(プロフ) - 鼻毛太郎さん» ✉️。こっちのHUNTER×HUNTERの作品も最高に好きです!ヒソカと夢主ちゃんがいつ結ばれるのかも楽しみです💖 (2月18日 13時) (レス) id: f769238e4f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 伊波トウナさん» コメントありがとうございます!🙌かれこれ今年で4年となる、まるで作者耐久レースでもしてんのかってぐらい長期連載ですが、俄然暗黒大陸までやる気ですのでぜひ気長にお楽し頂ければ幸いです!!🩷️💙 (1月12日 19時) (レス) @page44 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - とても面白くて一気見してしまいました!本当に面白かったです!続きが今も更新されてるって知った時マジでガッツポーズしました。更新頑張ってください!楽しみにしてます! (1月12日 18時) (レス) @page44 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 好き好き症候群さん» コメントありがとうございます!😭🤍文字量も章も多いというのによくぞここまで…!ペースはまちまちなのですが、更新は続けていきますので是非また遊びにいらしてください😌 (1月6日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
好き好き症候群(プロフ) - コメント失礼します〜!先程、作品を読み切ったのですが最高でした😖😖文章もかなり凝っていて、読みやすかったです!久しぶりに神作品に出会えて嬉しいです🥲🥲更新を楽しみに待っています🙇 (1月6日 8時) (レス) id: da48891b6d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年10月15日 14時