【H×H】赤ちゃんはどこからくるの？-13-

608：艶やかな死臭 ページ12

いつも通りの短い会話、そして暫くの間を設けると合図もなく二人は同時に動き出した。

ものの数分であたりには死体の山が出来上がり、床中が血の海と化す。
ただの喧嘩ならまだしも、相手にしているのは殺し屋と殺人鬼だ。

Aは、本来ならば無関係の人間を殺すことは＿＿相当癇に障らない限り＿＿しないのだが、喧嘩を吹っ掛けられたら話は別である。
仕事の邪魔をするなら殺してしまうのは仕方の無いこと。

トランプで相手の首筋を適確に掻き切り、時に素手で相手の頭蓋をそのまま掴むと膝で蹴り上げ、邪魔だと感じればそのまま窓ガラスが割れてしまったビルから投げ捨てる。

「…♤」

気分がいい。

大して唆りもしない相手だと言うのに、こんなに気分がいいのはAが居るからだろう。
本能だけで共存しているこの感覚が心地いい。

ふと、横目でAを垣間見ると、上がる血飛沫の中でAの顔が覗いた。
淡々と、冴え冴えと。常に殺しがそこにある、生きているのだから死もあり当然と言わんばかりの、彼女の冷えた表情と容姿相まって作られる儚さ。

顔に似合わず、Aは男の首筋を鋭利な爪で割き、その後すぐ体を翻すと、無駄のない動きで弾丸を避ける。
そしてそのまま、撃ってきた相手に回し蹴りを喰らわせた。

「妬いちゃうねぇ♤」

Aってば、ボクにはもうそんな顔してくれないだろうなぁ。

向かってきた相手を見ることなく拳を浴びせながら、ヒソカは短くため息を漏らした。
ボクも、『つまらないわね、腹の足しにもならない』って顔されてAとたまには殺し合ったりしたいんだけどなぁと脳に描いた時、Aがヒソカの視線に気づいた。

ぱち、と彼女と視線が合う。

顔に赤い斑点がいくつも飛び散り、Aの服は赤黒く血を吸い滲んでいた。
それがヒソカにとっては凄く珍しいと感じたあと、すぐにヒソカは気づいた。



あ、Aも楽しいんだ



銃撃音と断末魔。
濃い鉄の匂いと早くも香る死臭。
鬱々とした空気。
狂気と血に濡れるAの艶やかさ。


そして、Aはヒソカと視線が合った時、緩く口角をあげたのだ。


その瞬間、急速に沸騰したように湧き上がるムラっとする感覚。
これだと叫びたくなる感情を、ヒソカは急いで喉の奥に押し込んだ。
けれど、その理性は働くのにAに向かって一歩踏み出すのは抑えられなかった。




いいなぁ、羨ましい
Aに殺されるって、どんな感覚だろう
本当に心から羨ましい

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