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558:ギャルと別れ ページ8

「皆が君に同情して一人にしないわけじゃない。君が、人に囲まれる人間だからだよ」

「…うん」

母親の記憶はさしてないから、この感覚が母親のそれと似てるかは分からなかったけれど、Aに言葉は凄く優しくて酷く安心した気持ちになった。
泣きそうだったが、Aがまだ一度も泣いていないから、俺は泣かまいとぐっと呑み込みAの肩口に頭を埋めた。

Aを抱きしめ返すと、思った以上に華奢で驚いた。

「悩んだら、いつでも高専に帰っておいで」

うん、と告げた俺の声。泣きそうなのは気づかれてないといいな。

最後に、Aはとんとんと俺を安心させるように背を叩くと、解くように離れて立ち上がった。
そして、ふっと階段の上を見上げる。
俺も、Aの視線に習うよう座ったまま見上げた。

佇む男の姿。

「…脹相」

出会ったばかりの男、脹相は俺が名前を小さく告げると階段を静かに降りてきた。

「俺も行く」

「…なんで」

「俺は悠仁の兄だからだ」

つい先刻から妙な事を言うようになってきた脹相に、訳が分からんと頭を抱えそうになる。
Aに変な誤解だけはされたくないので、すぐさま「俺、兄弟とか元からいねーから」と言っておくと、Aは笑ってわざとらしく「どうかな」とおどけてみせた。

「どうかな」

ふん、やれやれ。言わんばかりに、Aに便乗した脹相には「その顔。辞めてもらっていい??俺が馬鹿なこと言ってるみたいじゃん??」と詰め寄るが改める素振りはない。

「いいよ、俺一人で行くから」

「ダメだ。今の悠仁は危うい。お兄ちゃんの目がないと」

「お兄ちゃんじゃねーんですけど」

「お兄ちゃん…悠仁に呼ばれると更にいい響きだ…」

「あのさぁ!!??」

ダメだ、埒が明かん。
額を抑える俺の横で、Aは肩を揺らして笑った。
渋谷の騒動が始まって、Aがこうやって笑ったのは今が初めてかもしれないとその時俺は悟ってしまい、まぁいいかなんて思ったけどそんなわけねぇ。

「待て、悠仁どこ行く…!」

「知らん」

「反抗期か!?」

「…」

脹相の呼び止める声を無視して、立ち上がるなり階段を降りだすと、ふとAが脹相の名を呼んだのだ。
Aが脹相を呼ぶとは思っていなくて、俺は思わず足を止めて振り返る。

すると、Aが脹相に向かって頭を下げたのだ。

「担任に代わり、頼ませて頂きます。私の生徒を、どうか宜しくお願いいたします」

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鼻毛太郎(プロフ) - コメントありがとうございます!!完結する…のか…?と半ば本人が思っておりますが、パワーで何とか!終わらせます!!笑笑こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします!!🙌😭🙇‍♀️ (3月16日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
だあれ(プロフ) - 1話から全部読んでます!!完結するのを楽しみしています。これからもよろしくお願いします(^人^) (3月16日 17時) (レス) @page50 id: 50e5576588 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - shinox2さん» 早いもので、正確に言うと今年の11月で4年目になるらしいです。どんだけ書いてんだよと思ってます😂 そんな本作ですが、本誌が今年で終わるというのでついに完結をうちも迎えるかもという…感慨深いものです…。ぜひぜひ、最後まで着いてきてくだされば嬉しいです!! (2月2日 8時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 12章完結おめでとうございます!!もう3年ですか?!そんなに経ってる気がしないです笑。呪術本誌追えてないですけど、鼻毛太郎さんの作品は追って行きます!!! (2月2日 0時) (レス) @page50 id: 9a8c06c139 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 無印さん» マインドに関しては五条をも凌駕する最強ギャル堪能して頂き誠に感謝です😭🙌混沌とする本編、まだまだギャルのギアは上がり続けるのでぜひお楽しみに!!🤍 (11月9日 8時) (レス) @page19 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年9月25日 8時

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