検索窓
今日:98 hit、昨日:36 hit、合計:59,519 hit

598:ギャルと父 ページ48

微かな羞恥心とむず痒さを掻き消すよう頭を掻いて、小さく「親父には迷惑かけたくねーんだ」と吐き出した。

「あんまりヤバいようだったら、特研の何人かを寺の護衛に回す」

「それは俺が呪術師を引退して長いからか?」

鼻で笑い述べた秋星の言葉に、Aは同じように鼻で笑って「そうかもな」と冗談混じりに返した。

「とにかく、上の連中が見境なくなることは確実だ。これからの世界は、ルールで話がつくような世界じゃなくなる。己の欲が最も露見する世界になる」

Aは、言いながら湯呑みの中身を全て飲み干した。
発つ準備を着実に終えていく。

「ま、声はデカいしすぐ説法解くし口はうるせー親父だけどさ、居なくなったら私の家族誰もいなくなっちまう」

Aは笑って言ったが、父である秋星には酷く寂しげに聞こえた。
元から弱音なんて滅多に吐かない子だ。
物心ついた時には、もう家庭には同性の大人は居らず、大体の悩みは一人で解決してきたのだろう。
誤解はされやすいが、器用な子である。
底なしに明るい性格も相まって、彼女は本当に人に恵まれたのだろう。


それでもやはり、Aは最初から孤独なのには変わりなかった。


言いはしないが、心のうちではどこか寂しく感じていたのかもしれない。


「そろそろ行くわ。後のことは、自分の足で探すことにする。そもそも、あの縫い目の野郎や宿儺だって謎だらけなんだ。私のことがすぐ人に聞いて分かるわけもない」


言いながら立ち上がるAに、ふと固く引き結んでいた口を秋星は開いた。


「A」


呼ぶと、Aは「なに?」といつもと変わらない様子で振り向く。
ここに戻ってきた時の殺伐とした空気は今は無い。
秋星の顔を見て幾分かはぐれたのか、それとも。

秋星は、そのままAの前で立ち上がると同時、彼女を抱きしめた。



「天元に会いに行け」



「え、」と小さく腕の中でAが零す。



「うちの蔵の奥に『薨星宮』と繋がる地下通路がある」

「うちに…!?どうしてそんな、」


生まれてこの方、知らなかった事実を突然述べられAは声を上げたが、秋星の言葉に掻き消される。


「今行けとは言わん。お前が調べてから、答え合わせのつもりで会いに行くのでもいい。それと、蔵にあるものはどれでも持っていけばいい」



それが、餞別だ。



秋星は言った。




「A。お前が何者であろうが、お前は俺の娘だ」

599:ギャルと天元たま→←597:ギャルとあの日



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (200 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1600人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鼻毛太郎(プロフ) - コメントありがとうございます!!完結する…のか…?と半ば本人が思っておりますが、パワーで何とか!終わらせます!!笑笑こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします!!🙌😭🙇‍♀️ (3月16日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
だあれ(プロフ) - 1話から全部読んでます!!完結するのを楽しみしています。これからもよろしくお願いします(^人^) (3月16日 17時) (レス) @page50 id: 50e5576588 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - shinox2さん» 早いもので、正確に言うと今年の11月で4年目になるらしいです。どんだけ書いてんだよと思ってます😂 そんな本作ですが、本誌が今年で終わるというのでついに完結をうちも迎えるかもという…感慨深いものです…。ぜひぜひ、最後まで着いてきてくだされば嬉しいです!! (2月2日 8時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 12章完結おめでとうございます!!もう3年ですか?!そんなに経ってる気がしないです笑。呪術本誌追えてないですけど、鼻毛太郎さんの作品は追って行きます!!! (2月2日 0時) (レス) @page50 id: 9a8c06c139 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 無印さん» マインドに関しては五条をも凌駕する最強ギャル堪能して頂き誠に感謝です😭🙌混沌とする本編、まだまだギャルのギアは上がり続けるのでぜひお楽しみに!!🤍 (11月9日 8時) (レス) @page19 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年9月25日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。