597:ギャルとあの日 ページ47
神妙な顔をするAに、秋星は相変わらず無愛想な顔をしたまま湯呑みに口をつける。
「思っている通り、お前に憑いていたのは土地神だ。あの跡地に祠があっただろう。あの中身がアレだ」
「待って、でもそうだとすると一つ可笑しなことがある。私が過去向かった駅はその黒煤と呼ばれている場所じゃない。そう、アレは…土地神により作られた生得領域…」
「あそこまでの高等呪霊が生得領域を閉じれんわけがないだろう。当時、非呪術師の被害報告が相次いだからお前は向かった。あそこまで非呪術師が入っていけるとなると、作り出された生得領域は入り口が塞がっていない状態だったはずだ」
「…じゃあ、どうして」
秋星は少し考える素振りを見せたあと、ふむと口を開く。
「駅を作り出した呪霊は別で存在していて、お前が来ることを聞きつけたその例の男がその日ピンポイントに土地神を放った」
「当時、傑はまだ呪詛師じゃないし死んでもない。縫い目の男が自在に土地神を操るのは不可能だ」
「いや、可能だ」
あっさりと否定した父親に、Aはむっと顔を顰める。
秋星は、Aの表情を気にもせず言葉を続けた。
「土地神が元よりその男の仲間であるなら操る必要はない」
「…!」
いや、何を驚いている。
思い返せば、あの男はそれらしいことを言っていたではないか。
元よりこれは自分のものであると。
「思い当たる節があるようだな」
Aの顰めっ面を前に、秋星は言った。
「それと、まぁ答えられる範疇で言っておくと、母さんを殺したのは確かにその男だ。だがな、A。それは、お前のせいじゃない。母さんが奴に狙われるようになったのは、母さんが始めた物語だ」
母さんが始めた物語。
Aは、その言葉を何度も頭の中で復唱する。
秋星はふと外へ目を向け「明けてきたな」と呟く。
白んでいた空が、徐々に淡い光を帯び始める。
外の世界が完全に照らされた時、その日起こることの全てが決まるだろう。
東京のインフラは崩壊し、まるで大災害のような光景がやってくるはずだ。
子供達は集団で疎開を始め、目に見えない獣が日夜跋扈するようになる。
あたりでは多くの死因不明の死体が転がり、生きた人間が地下へと逃げ隠れる。
外の世界はまるで、忘れられた大地のようになるだろう。
「発つのか、A」
秋星が訊ねる。
「うん…。その、長いこと此処には居られない。多分、悟のいなくなった今上の連中は私を殺しにくる」
1601人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼻毛太郎(プロフ) - コメントありがとうございます!!完結する…のか…?と半ば本人が思っておりますが、パワーで何とか!終わらせます!!笑笑こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします!!🙌😭🙇♀️ (3月16日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
だあれ(プロフ) - 1話から全部読んでます!!完結するのを楽しみしています。これからもよろしくお願いします(^人^) (3月16日 17時) (レス) @page50 id: 50e5576588 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - shinox2さん» 早いもので、正確に言うと今年の11月で4年目になるらしいです。どんだけ書いてんだよと思ってます😂 そんな本作ですが、本誌が今年で終わるというのでついに完結をうちも迎えるかもという…感慨深いものです…。ぜひぜひ、最後まで着いてきてくだされば嬉しいです!! (2月2日 8時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 12章完結おめでとうございます!!もう3年ですか?!そんなに経ってる気がしないです笑。呪術本誌追えてないですけど、鼻毛太郎さんの作品は追って行きます!!! (2月2日 0時) (レス) @page50 id: 9a8c06c139 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 無印さん» マインドに関しては五条をも凌駕する最強ギャル堪能して頂き誠に感謝です😭🙌混沌とする本編、まだまだギャルのギアは上がり続けるのでぜひお楽しみに!!🤍 (11月9日 8時) (レス) @page19 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年9月25日 8時