【呪術廻戦】ギャルと呪術-12-

589：ギャルと家族 ページ39

九十九は、そんな光景に呆れからも安堵からも息を漏らした。


うちの姪は、いつからこんなにも沢山の人間に慕われるようになったのかね。


少しだけ、昔のことを九十九は思い出してしまう。
呪術界に入った時、九十九はAが高専に入学したことを彼女の父親＿＿＿＿可借夜秋星から聞いた。

義姉の娘だし、12歳で母親を殺害という形で失くし、高専入学までは彼女に“普通の少女”としての生活を送らせるため、呪術について両親は何も教えていなかったときた。
それに関しては、九十九も納得していたのだが、同時に不安と心配もあったのだ。

それは予想通り、Aの気の強さと豪快な性格も相まって分かり易く入学当時は呪術界から迫害のような扱いを受けていたのを、九十九は知っていた。



特別な家系の生まれでもない。
歴史ある術式を持っている訳でもない。
特級という称号を持っている訳でもない。
従順なわけでも、都合がいい訳でも。


地獄みたいな経験を何度だってしてきた。
そもそも、正体不明の何かに憑かれた時点で死を選んだって不思議じゃなかったのだ。



それでもお前は、今日まで生きる事を選び続けてきたんだね



いや、そうさせてくれたのは五条君の存在があったからか…。


九十九は、小さく笑う。
涙ぐみそうになったが、歳だなと自分に自嘲紛いに言って見せて何とか堪えると、平気な顔をしたAへと寄って行った。

「それで、ウチの破天荒な姪は今までどこで何して＿＿＿＿＿、」

九十九が言いかけた時、彼女の横を風でも切るかのように何者かが横切った。
そして、次の瞬間にはパコンッと軽くも大きな音を鳴らしていたのだ。

あらま。
九十九がポカンと目の前の光景に口を開ける。
広がっていたのは、伏黒が何処から出したのか雑誌を丸めて、Aの頭を叩いたあとであった。

「あだぁッ！！？」

突然の頭部に与えられた衝撃に頭を垂れるA。

伏黒がAを叩くなんて、九十九と脹相はさておき、日頃の二人を知る残り三名は一連の流れに呆気に取られていた。

「すげぇいい音…」

思わず真希が感嘆の音を漏らす。

というか、それよりも。
当事者二人を抜く計五名は、そろりと伏黒の顔を垣間見た。
その顔、普段彼と関わりがなくとも分かる。



すっっっげぇ、怒ってる〜〜〜〜！！！！



「俺がなんでぶっ叩いたか分かりますか」

分かって当然。
彼の言葉に疑問符などない。

「…何も言わず、失踪したから……でしょうか」

「外れです」

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