588:ギャルと生還の握 ページ38
「正直言って、あの時の私の相手が直哉君だけじゃ役不足だった。“覗き屋”に私の立ち位置を混乱させる為には、私の相手は明らかな高専側がもう一人必要だったからね」
君のおかげさ。そう言って、握手を求めたAに脹相は訳の分からないままAの片手を握った。
とんでもない拳を放つくせに、華奢な手だな。離されたあと、脹相は自身の掌を眺めてみる。
「A」
ふと、横から呼ばれたかと思うと、いつの間にか側に真希と乙骨がAを待ち侘びていたよう佇んでいた。
名前を呼んだのはどうやら真希の方らしく、Aが彼らの方を向くと、気怠げに隣の乙骨へと顎をしゃくった。
「ハグして欲しいんだと」
「え!?ちが、真希さん…!」
「だって、お前さっきから変にモジモジしてたろ。それともアレか、トイレかよ」
平然とした態度でサラリと述べる真希の発言に、乙骨は顔を赤くして「どっちも違うよ!」と必死に否定する。
そして、Aに向けた瞳を気まずいのか恥ずかしいのかウロウロさせ口を開いた。
「僕はただ、Aさんと久々に会えて嬉しくて…ほら、さっきはお互い演技しなきゃ行けなかったし。だから、その、ハグとは言わず握手ぐらいは……」
やっぱり声に出すと恥ずかしいのか、最後の方は彼本人にしか聞こえないぐらい小さな声で言っていた。
まだ口を彼はもごつかせて何か言っている中、見兼ねたAは乙骨の前に片手を差し出した。
「憂太、顔上げな」
Aの声音に乙骨はゆっくりと顔を上げる。
Aの瞳が、彼に片手を握るんだと促していた。それを察した乙骨は、まだ恥ずかしさの残る赤い顔でゆっくりとAの手を握った。
矢先、Aがその手をグッと引いて乙骨を抱きしめる。
「ありがと、あの時気づいてくれて。マジで、本当に感謝してる。強くなったね、憂太」
彼の体を力強く抱きながら、Aは言った。
その言葉に胸の奥がぐっと熱くなって、乙骨は思わず感極まって泣き出しそうになった。
今言える精一杯の返事を乙骨は返した。
「…はいッ!」
それだけで、彼ら二人は充分であった。
乙骨と体を離したAは、その隣の真希にも片手を差し出し力強い握手を交わす。
「さすが。もうお前に関しちゃ言うことなしだよ」
「ははッ、Aに勝つまで死なねぇって決めてんだよ私は」
「言うねぇ、じゃあ一生死ねねぇな」
Aの軽口に、真希はからりと笑って「ムカつく奴」と悪態をついてみせた。
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鼻毛太郎(プロフ) - コメントありがとうございます!!完結する…のか…?と半ば本人が思っておりますが、パワーで何とか!終わらせます!!笑笑こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします!!🙌😭🙇♀️ (3月16日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
だあれ(プロフ) - 1話から全部読んでます!!完結するのを楽しみしています。これからもよろしくお願いします(^人^) (3月16日 17時) (レス) @page50 id: 50e5576588 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - shinox2さん» 早いもので、正確に言うと今年の11月で4年目になるらしいです。どんだけ書いてんだよと思ってます😂 そんな本作ですが、本誌が今年で終わるというのでついに完結をうちも迎えるかもという…感慨深いものです…。ぜひぜひ、最後まで着いてきてくだされば嬉しいです!! (2月2日 8時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 12章完結おめでとうございます!!もう3年ですか?!そんなに経ってる気がしないです笑。呪術本誌追えてないですけど、鼻毛太郎さんの作品は追って行きます!!! (2月2日 0時) (レス) @page50 id: 9a8c06c139 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 無印さん» マインドに関しては五条をも凌駕する最強ギャル堪能して頂き誠に感謝です😭🙌混沌とする本編、まだまだギャルのギアは上がり続けるのでぜひお楽しみに!!🤍 (11月9日 8時) (レス) @page19 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年9月25日 8時