【呪術廻戦】ギャルと呪術-12-

584：ギャルと死滅回游 ページ34

「結果、お互い追わなかった。ということは、内心では僕らの目的と意思は一緒ということになる」

「それって、つまり」

乙骨は頷いて答えた。


「Aさんは僕らの味方だ」


その言葉に、虎杖は全身の力が抜けていく気を覚えた。
途端に気が緩み、なんだか腹でも減った気がする。

「ってことは、Aのアレ全部演技だったってこと？」

「そういうことになるね」

眉を下げて笑う乙骨に、虎杖は頭を抱えた。
強い人達って皆そんな演技派なのかよ、怖すぎるだろ。
黙って聞いていた伏黒は、現場を目の当たりにしていた乙骨に「Aさん、そんな演技派だったんですか？あの人こそ大根役者っぽいのに」とサラリと失礼な事を混ぜて訊ねていた。

ふと、彼らの会話の後ろで虎杖は、そもそもな重要事項をまだ何も話されていないことに気づいた。

「なぁ…二人共。それで、Aが“殺し合い”に参加してるっていうのは？」

乙骨と伏黒の会話が止まる。
不思議そうな顔をみせる虎杖に反して、二人の表情は一気に深刻さを帯びた。

乙骨と伏黒は互いに視線だけで言葉を酌み交わす。
そして、今度は伏黒が口を開いた。それも、先程より一層真剣な声で。


「『死滅回‪游』それが殺し合いの名だ」


「なんだ…それは…」


「虎杖。俺がお前に会いに来たのは、お前を高専に連れ戻すだけじゃない。＿＿＿＿＿＿俺を助けろ、虎杖」


伏黒の瞳は出会った時と変わらず鋭かった。
だが、一つだけ出会った頃にはなかったものが彼の瞳には宿っていた。

覚悟だ。

諦めを知らない覚悟。


「『死滅回游』には、津美紀も巻き込まれてる」


その瞳に宿る覚悟はどんなものよりも強く眩しく光り輝く。
どんな目的を掲げているにせよ。その光は輝きを失わぬ限りどんな時も自らの行動理念の指標になる。

虎杖はその光を、過去自分も持ち合わせていたことを思い出した。

あぁ、そうだ。
俺は、ここで灰のように死んじゃいけない。
爺ちゃんが残した言葉を、光を、俺は見失っちゃいけない。
そこにどんな過程や目的があったとしても。

「…伏黒、聞かせてくれ。『死滅回游』ってのは…なんだ」

「加茂憲倫が仕組んだ、呪術を与えられた者達の殺し合い」

二人の視線が真っ直ぐと繋がった。



「頼む。お前の力が必要だ」




人を助けろ。
そう、爺ちゃんが俺の後ろで言った気がした。



虎杖は、立ち上がると訊ねた。



「俺は何をすればいい」

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