【呪術廻戦】ギャルと呪術-12-

554：ギャルとお家争い ページ4

「それは、可借夜Aも同じでは？」

男を立てられないと言うのであれば、あの女なんて最もな例だ。
それなのに、何故あの女の肩を持つのか。何故あの女だけに特別な目を向けるのか。

「あの女と真希の何が違＿＿＿＿＿＿、」

「どの口がAちゃんを語ってん？」

ヒリついた瞳が女中を刺す。
触れられてもいないのに、まるで首を絞められているような気分だった。
途端に息が苦しくなった気さえ覚える。

心臓がきゅうと縮まり、女中は頭を垂れて返す。

「出来すぎた真似を、致しました…」

顔を合わせていないのに、蛇のような瞳で頭から爪先まで値踏みされているような気配が女中の体を這う。

直哉は暫くの沈黙のあと、人が変わったようにころりとAの話をしていた頃の表情に戻すと「まぁええわ」と適当に返した。
そして、襖を開け放つと軽薄な笑みを引っ提げ、中の人物達に言う。

「あれ、待たせてもうたかな。俺が来んでも来やんでも一緒や思うてたんやけど」

「遅いぞ」

そう告げたのは、同じく特別一級術師＿＿＿＿禪院扇。
その横では、不機嫌そうに特別一級術師の禪院甚壱が手持ち無沙汰に顎髭を撫でていた。

「だって、どうせ次の当主は俺やし」

さらりと、狐にも似た笑みを顔面に貼り付けて直哉は言ってやる。

「兄さん方は皆ポンコツ。その他血族もアカンし論外もおる。甚壱君はなぁ…顔がアカンわ」


甚爾君と逆なら良かったのにな。


その一言で、静の姿勢を保っていた甚壱の気が一気に逆立つ。
空気を裂く程早く、場の空気を圧するほど重い拳が直哉目掛け飛ぶ。しかし、直哉は軽い動きでその拳をするりと避けてしまう。
彼とて、特別一級術師の名は伊達ではない。

とはいえ、その伊達でない名を持つのは彼だけではない。

空気を斬り、直哉の喉元にあてがわれる切っ先。
扇の刀だ。

「パパが峠を彷徨ってんねん。堪忍したってや」

薄っぺらな許しを乞いてみせるのさえ、彼らにとってむかっ腹がたつことこの上ない。
そして、タチが悪いのはこの男がそれを理解してわざと仕掛けているということ。

血縁という名が彼らの邪魔をする。

そんな矢先、襖が新たに開かれた。

背丈の低い珍妙な顔をつきをした初老の男が、顔に似合わず深刻な顔をして入ってくる。

「たった今、禪院直毘人様が亡くなられました」

三人の空気が一気に変わる。
当主の死を持って、この家は二転にも三転にも変わり得る。誰が次の当主となるか、それ全てが今後の運命となる。

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