578：ギャルと九月某諸国にて ページ28
ぱ、と乙骨に確認をとるよう虎杖は顔を上げた。
すると、能面のように無愛想だった乙骨の顔が突然前触れもなく解けたのだ。
「よかったぁ〜〜〜〜」
先程の彼とは似つかわしくない、鬱々とした暗さのない顔。大袈裟に眉を下げ、微かに安堵で涙を浮かべ虎杖の姿にほっとした笑みを見せる乙骨の顔は、気弱で頼りない少年のように思えた。
打って変わった態度に、虎杖はぽかんと呆気に取られる。
「九月頃かな、五条先生がわざわざ会いに来てね。あ、僕はその時海外にいて＿＿＿＿、」
乙骨は柔和な声音で、話し出した。
九月某日。
それはまだ、交流会前の事だった。
その時は、Aも五条も恋人関係ではなく、懐かしくも恋人のフリをし始めたばかりの時であった。
「ちょっと上の動きがさ、きな臭いんだよね」
「きな臭い…ですか」
「嫌な予感って言うかさ。まぁ、秤は大丈夫だろうけど、僕になんかあったら一年と二年を憂太に頼みたくて」
海外。某諸国の廃れた商店街を二人は歩く。
自分よりも数十センチ高い五条を見上げながら、乙骨は一切悪気ない声で「女性関係とかですか？」と訊ねた。
「えぇ…憂太も言うようになったねぇ」
「いや、五条先生に『何か』って想像つかなくて…。あ、Aさんに浮気でもバレたとか…」
「憂太？？？？あれ、僕をなんだと、あれ？？？？？」
うちの憂太ちゃんはいつの間に僕に毒を吐くようになったのかしら。
五条はわざとらしく片頬に手を当ててみせる。
それでも、乙骨を見ると彼の顔は割と真剣な様子だったので、五条は短く息をついて「あのね、」と切り出してみせた。
「十二年好きな女の子が変わらないのに、突然浮気なんて憂太できるの？」
「……無理だと思います」
「でしょ？僕にとって、A以外は眼中にないわけ。人かA以外かってぐらい眼中にない」
「先生、それは病院行った方がいいと思います」
「…憂太のそういう冗談、何。あのカタコト外国人から習ったの？なんだっけ、ジョニーだっけケニーだっけ」
「ミゲルです。ミゲルさん」
乙骨の言葉に、五条はわざとらしく「あーそうそうそれ」と相槌を打つと、再び言葉を続けた。
「だからね、僕がA以外に気を向けるなんて、天地がランバダを踊ってもないわけ。………まぁ、まだ付き合ってもないんだけどね」
自分で言ったくせに、五条はその後勝手にダメージを受ける。
くそ、フリじゃなくて僕があの時強行突破で付き合おうって言ってれば。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1600人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼻毛太郎(プロフ) - コメントありがとうございます！！完結する…のか…？と半ば本人が思っておりますが、パワーで何とか！終わらせます！！笑笑こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします！！🙌😭🙇♀️ (3月16日 20時) (
レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
だあれ(プロフ) - 1話から全部読んでます！！完結するのを楽しみしています。これからもよろしくお願いします（^人^） (3月16日 17時) (レス) @page50 id: 50e5576588 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - shinox2さん» 早いもので、正確に言うと今年の11月で4年目になるらしいです。どんだけ書いてんだよと思ってます😂 そんな本作ですが、本誌が今年で終わるというのでついに完結をうちも迎えるかもという…感慨深いものです…。ぜひぜひ、最後まで着いてきてくだされば嬉しいです！！ (2月2日 8時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 12章完結おめでとうございます!!もう3年ですか?!そんなに経ってる気がしないです笑。呪術本誌追えてないですけど、鼻毛太郎さんの作品は追って行きます!!! (2月2日 0時) (レス) @page50 id: 9a8c06c139 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 無印さん» マインドに関しては五条をも凌駕する最強ギャル堪能して頂き誠に感謝です😭🙌混沌とする本編、まだまだギャルのギアは上がり続けるのでぜひお楽しみに！！🤍 (11月9日 8時) (レス) @page19 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鼻毛太郎
| 作成日時：2023年9月25日 8時
