576:ギャルと煙 ページ26
最初、小刀に頬を切られたのは、恐らく完全に勘で動くまでに意識のラグがあったからなのだろう。
Aは、元から勘で直哉の攻撃を避けられたわけではない。
この状況で勘で避けるしかないと確信し、初めての行動に出たのだ。
致命傷を負わせられるかもしれない攻撃を勘頼りに避けるのは至難の業。
“勘で動くぞ”と意識をしても、致命傷への恐れ故に“避けなくては”という意識が脳を支配する。
その感覚を完全に断ち切るまでが、Aが小刀の先を完全に避けきれるようになるまでの時間。
呪術界きっての天才の名は伊達じゃない。
だがしかし。
同時に、それを解明した直哉は、Aが現在もつ欠陥にも気づいていた。
Aちゃんは、勘で動く間は攻撃できへん
人間の構造上、“避ける”ということから“攻撃する”という認識に変える時、脳の中で電気信号が一瞬切り替わらなアカン。
その一瞬の間に、Aちゃんの勘は切れることになる。
即ち、俺がその一瞬を掴んだ場合、Aちゃんに一発叩き込めるということ。
だから、俺は攻撃を辞めたらアカン。
焦って術の出力を変えてもアカン。
とにかく、その一瞬まで耐え抜いて、尚且つ一瞬で蹴りをつけるために拳の力は一切落としたらアカンのや。
直哉の眼光の中に、勝ち筋の光が宿る。
この攻防戦、勝ったな。と、口の端を吊り上げたその時だった。
視界の端、柱同士の間から何かが姿を現したのを直哉は捉えた。
両の掌を、槍のように合わせた男。
「別に、私は今お前に勝たなくていいんだ。そういう場じゃない」
Aが、微かに後方に体重をかける。
同時、男___脹相が口を開いた。
「『超新星』」
合わせた手を開き放たれた血液は、直哉の前で炸裂し彼の体を濡らす。
Aはといえば、炸裂の前に既に避けるつもりであったようで、彼らから既に距離をとっていた。
「な…クソ…ッ」
直哉は膝をつく。
本当はこの技でAにも膝をつかせるつもりであった脹相は、苦虫を噛み潰した顔でAに目を向ける。
「次は仕留める…ッ」
「その必要はないよ」
Aの言葉に、脹相も直哉も眉を顰めた。
「もう退くから」
そう言って、ゆったりとした足取りで柱へ向かって歩き出す。
ひらりとAが片手を二人に振る。
「待て…!」
急いで脹相はAを追う。
しかし、彼女が消えていった柱の裏には、既に誰も存在していなかったのだった。
1600人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼻毛太郎(プロフ) - コメントありがとうございます!!完結する…のか…?と半ば本人が思っておりますが、パワーで何とか!終わらせます!!笑笑こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします!!🙌😭🙇♀️ (3月16日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
だあれ(プロフ) - 1話から全部読んでます!!完結するのを楽しみしています。これからもよろしくお願いします(^人^) (3月16日 17時) (レス) @page50 id: 50e5576588 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - shinox2さん» 早いもので、正確に言うと今年の11月で4年目になるらしいです。どんだけ書いてんだよと思ってます😂 そんな本作ですが、本誌が今年で終わるというのでついに完結をうちも迎えるかもという…感慨深いものです…。ぜひぜひ、最後まで着いてきてくだされば嬉しいです!! (2月2日 8時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 12章完結おめでとうございます!!もう3年ですか?!そんなに経ってる気がしないです笑。呪術本誌追えてないですけど、鼻毛太郎さんの作品は追って行きます!!! (2月2日 0時) (レス) @page50 id: 9a8c06c139 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 無印さん» マインドに関しては五条をも凌駕する最強ギャル堪能して頂き誠に感謝です😭🙌混沌とする本編、まだまだギャルのギアは上がり続けるのでぜひお楽しみに!!🤍 (11月9日 8時) (レス) @page19 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年9月25日 8時