【呪術廻戦】ギャルと呪術-12-

575：ギャルと天賦の実力者 ページ25

なんか、おかしない？

直哉は唇の裏で呟く。
Aから一旦距離を置き、一瞬の観察に意識を振ってみてもその違和感は拭えない。


あれ、俺。
Aちゃんのヒビ入ってない片腕、切りつけようとしたやんな。あれ、でも頬切ったよな。
Aちゃんの顔は狙うつもりないねん。だって、顔殴ったらその後やる時萎えるやん。


直哉は地を蹴って再びAと距離を縮めた。
先程のことを確かめるように、直哉は小刀を奮った。



やっぱり



直哉が脳の中で吐く。
Aに小刀の先が届くといえばそうなのだが、狙った位置から微かにズレている。
いや、ズレているというよりも“自分が遅れている”…？

気づいた頃には、小刀が完全にAに届かなくなっていた。
遅れてる、というのも何か違うような気がする。
脳で冷静に推理する中、Aの脇の下で拳が握られたのを直哉はハッとして捉えた。

「…ッ、」

すぐさま小刀を捨て、Aからのカウンターを掌で受ける。

ビリビリとした痛みが掌から肘に向かって電光のように駆けた。
その衝撃に直哉は思わず顔を歪めたが、すぐさまその鋭い猛禽類のような瞳を目の前のAへ向ける。



なんで俺の速度に追いつかれてんねん…！



道具を使ったから、さては軌道がわかり易すぎたのか。
即座に肉弾戦の判断に切り替えて、直哉は拳を間髪入れず立て続けに叩き込んだ。
しかも、速度は先ほどよりも早くして。

「…っぶね、」

Aが鼻先を掠めた直哉の拳に小さく吐き捨てる。
だがしかし、それでも掠めるだけでAに拳は当たらず、またもや次第に完全に見切られるようになってしまう。





なんでやなんでやなんでや…ッ！！？




直哉の奥歯がギリと音を鳴らした。
焦りに任せ、更に術式で動く速度を早めようとしたその時。

直哉の視界に、Aの顔が映った。
その彼女の顔を見て、直哉は驚愕したのだ。




は…？




Aの瞳が、明らかに自分の動きに追いついていない。
それはまるで、瞳で直哉の動きを追うことを放棄したように。





いや、そうやない…！
放棄したようにやない…！！




直哉は気づいた。




“放棄してる“んや…ッ！！
術式もないのに、はなから俺に追いつけへんのを理解してる。
だからこそ、Aちゃんは己の経験だけを頼りに避けてんねや…ッ




「バケモンか、ほんま…ッ」




直哉は吐き捨てる。



Aは最初から、直哉の攻撃を全て勘だけで避けていたのだ。

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