【呪術廻戦】ギャルと呪術-12-

570：ギャルと第三ラウンド ページ20

Aが合金の拳を握った。
その拳から、突然火花がバチバチと弾けたのを直哉も脹相も見逃さなかった。

「術式が無いんじゃないのか…！？」

脹相の言葉にAは答えない。
貫かんばかりの強烈な拳は、直哉の胸ぐらをぱっと離した途端、彼の腹部へ叩き込まれた。

大きくくの字に折れ曲がる直哉は、そのまま耐えることもままならずコンクリートの壁に激しく打ち付けられる。
無惨にもうつ伏せに倒れ込んだ直哉に対し、Aは両手でハートの形を作ってみせながら口角を吊り上げた。

「や〜い、仕返しぃ〜♡」

同時、「ん？」とAが前触れもなく手の中へ目を向けた。

「…？」

なんだ、と距離を置き動向を眺めていた脹相も片眉をあげる。

微かだが、遠くからでもAの殴った方の片手が痙攣のように震えているのが見えた。
そして、次の瞬間には派手な音を立て合金だというのに、ガラス片のように大破したのだ。

「…やっぱ、力加減上手く出来ねぇな。また壊しちまった」

Aは呟きながら、バックステップで直哉から距離を取ると、まだ大破していない片手のグローブを投げ捨てる。

「そろそろ潮時かな」

Aの呟きは、わざとなのか否か。
いや、こちらに聞こえるよう言った気がする。

未だ、何をしに来たのか一切不明なA。
攻撃を仕掛けるべきか思案する中、脹相とAの目が合った。
途端、沈黙の中Aは例の意地らしいネコ科を思わせる笑みを浮かべて見せたのだ。

その顔、先ほど直哉に向けたものと同じ。

すぐさま脹相は理解した。
その笑みは狩りをするための合図の笑みだ。
Aは、無論脹相も狩れるなら狩るつもりである。


『赤鱗躍動』


攻撃をAに仕掛けられるよりも早く、脹相は動体視力をまず上げることにした。



可借夜Aの現在のレベルを全く計れない今、まずは動きを見ることに徹した方が得策だ


脹相が動くことを決意し、片足を浮かせかけた時。
視界の端で起き上がってきた影を捉える。
Aも同じようで、脹相と同時にそちらへ目を向けた。


「この…ッ、クソアマがァ…！！立場全く理解してへんようやなァッ！？」


まだよろけつつも、しっかりと起き上がってきた直哉にAは唇の端を吊り上げる。

「さっすが直哉クン、その辺の術師とは違うねぇ」

「出来るだけ酷く痛めつけたるわ」

「うっせ、バーカ！」

舌を出し、中指を立てるA。
直哉の額に青筋が浮かぶ。

「第三ラウンドで終いや」

571：ギャルと漂白→←569：ギャルと恋は盲目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す