569:ギャルと恋は盲目 ページ19
見れば親指が微かに切れていて血が滲んでいた。
この女…ッと思ってAへ急いで睨みを効かすと、Aの唇が自身の血液で微かに色づいているのが目に入る、思わず二度見してしまう。
それはもう、関西なら拍手が起きるほど綺麗な二度見であっただろう。
そんなAが、見せつけるように唇を舐める。
「わぁ、直哉クンの味がする〜」
「はぁ!!?」
先程の狂気と得体の知れなさはどこへやら。
真っ赤になった顔から素っ頓狂な声が飛び出る。
「随分手馴れてる感じだったから、直哉クンってば知らない間に女でも覚えちゃったかぁと思ったら案外そうでもなさそうだね」
それとも、とAが付け足す。
「まだまだ、ギャルは君にはハードルが高いかなぁ?」
煽るセリフを前にして、直哉の顔に羞恥と怒りが混ざる。
一方、Aはそんな事を気にも留めず、寧ろ面白がって喉奥でくくと笑ってみせた。
漸く直哉の長い話があったおかげで体も感覚を取り戻し、Aは場に削ぐわず緩慢な動きで立ち上がる。
直哉は、じりと微かに退いた。
それでも、Aは揺るがず歩を進める。
今度は私が責める番と言わんばかりに。
「直哉クンさ、昔言ったこと忘れちゃったのかな」
「な、何の話や」
「あーあ、やっぱ忘れてる」
一歩、また一歩、それはまるで狼がのしとゆっくり歩を進めるように直哉に近づく。
「君は私をお嫁さんにしたい訳でも、私に恋をしている訳でもない」
忘れてない。
忘れるわけがない。
忘れていたはずがない。
咄嗟に出て来なかったのは、Aがなんの話をしているのか最初分からなかったからだ。
だけど、切り出した途端に全て、それは頭の中の箪笥をひっくり返されたように全てを思い出した。
あのネコ科を思わせる表情、吊り上がった口から覗く八重歯。
猫撫で声は、ざらついている舌でゆっくり首筋あら顎の下を舐められているように、艶かしくくすぐったい。
生唾を直哉は飲み込む。
顔が赤いのか青いのか、親切な人が居るのなら教えて欲しいぐらいだ。
自分では確認出来ない。だって、今動けば喉元でも食いちぎられそうだから。
「あとはわかるでしょ?」
ぐっと距離を縮め、Aの長い爪が直哉の顎を掬う。
「私の遺伝子に恋してんだよ、直哉クン」
ぐぬ、直哉が口の中でそう零しかけた途端、Aの緑色の瞳がギラリと光を帯びた。
そして、突然有無を言わさず胸ぐらを掴まれたのだ。
「そんじゃま、歯ぁ食いしばれよ」
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鼻毛太郎(プロフ) - コメントありがとうございます!!完結する…のか…?と半ば本人が思っておりますが、パワーで何とか!終わらせます!!笑笑こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします!!🙌😭🙇♀️ (3月16日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
だあれ(プロフ) - 1話から全部読んでます!!完結するのを楽しみしています。これからもよろしくお願いします(^人^) (3月16日 17時) (レス) @page50 id: 50e5576588 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - shinox2さん» 早いもので、正確に言うと今年の11月で4年目になるらしいです。どんだけ書いてんだよと思ってます😂 そんな本作ですが、本誌が今年で終わるというのでついに完結をうちも迎えるかもという…感慨深いものです…。ぜひぜひ、最後まで着いてきてくだされば嬉しいです!! (2月2日 8時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 12章完結おめでとうございます!!もう3年ですか?!そんなに経ってる気がしないです笑。呪術本誌追えてないですけど、鼻毛太郎さんの作品は追って行きます!!! (2月2日 0時) (レス) @page50 id: 9a8c06c139 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 無印さん» マインドに関しては五条をも凌駕する最強ギャル堪能して頂き誠に感謝です😭🙌混沌とする本編、まだまだギャルのギアは上がり続けるのでぜひお楽しみに!!🤍 (11月9日 8時) (レス) @page19 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年9月25日 8時