567:ギャルと押し付け ページ17
「どのへんが…っ?」
それでも、血も吐かなければ喋ることも出来るというのはAだからだろう。
半身起き上がらせて、ギラついた獣のように好戦的な笑みで直哉を見上げる。
直哉は、そんなAの前にしゃがみこみ「失望はしてるけど、ずっと味方やん。出会った時から」と薄ら笑いを浮かべて返す。
そして、そのすぐあとに直哉は片手だけをサッとあげた。
止まれ、の合図。
「気づいとんで。後ろの君、今『穿血』を打てば俺の体を貫いてAちゃんの脳天を貫くことになる。味方か敵か判断は別にして、Aちゃんが真に味方だったとき困るのは君らなんちゃう?」
喉奥だけで笑う声音が言葉の後に続く。
なんて汚い奴だ、脹相は微かに舌打ちをして合わせた両手を下ろした。
「Aちゃん、昔はあんな強かったのにどうして弱くなってしまったん?」
直哉は振り上げた片手を降ろし、Aの頬にそのまま滑らせた。
酷く寂しそうな声を漏らして、親指の腹でAの目の下についた泥を拭ってみせた。
「悟君と一緒になったって、あの人自分で勝手に強くなるだけやん。Aちゃんに何与えてくれるん?」
すり、とAの頬をゆっくり撫でる。
掌なのに、まるで蛇の舌で舐められているみたいだ。
声音は、憂いと落ち着いた優しさが含まれているように聞こえるが、直哉から発せられるそれには狂気が孕む。
遠くから警戒して二人の動向を眺める脹相は思わず、いつかプチンとなにかが切れてAに平手打ちでも喰らわすんじゃないだろうかと心臓をざわつかせていた。
「Aちゃんは独りで居る時が一番強いんや。甚爾君みたいにな。ほら、夏油傑君やっけ。あんな半端な奴と一緒におったからAちゃんは弱なったんや」
Aちゃんは悟君とは違う。
悟君みたいに、無条件に強く居れる訳やない。
けど、甚爾君の事を誰よりも理解しとる。
直哉のAを見下ろす瞳がぐっと小さくなる。
「自分の欠片なんてミリも残す気なかった甚爾君は、Aちゃんにだけ賭けた。二人だけや、互いの強さを理解しとったんわ」
言ったあと、今度は不気味に直哉の瞳が弧を描いた。
「俺、Aちゃんの事匿いに来たんやで。現当主がついさっき死んだんや。それで、次の当主は恵君にしよって話が出とる。誰かが出した話ちゃうで。甚爾君が残した契約事項や」
その言葉に、ただ黙っていたAの瞳が微かに揺らぐ。
その揺らぎを直哉は見逃さない。
1601人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼻毛太郎(プロフ) - コメントありがとうございます!!完結する…のか…?と半ば本人が思っておりますが、パワーで何とか!終わらせます!!笑笑こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします!!🙌😭🙇♀️ (3月16日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
だあれ(プロフ) - 1話から全部読んでます!!完結するのを楽しみしています。これからもよろしくお願いします(^人^) (3月16日 17時) (レス) @page50 id: 50e5576588 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - shinox2さん» 早いもので、正確に言うと今年の11月で4年目になるらしいです。どんだけ書いてんだよと思ってます😂 そんな本作ですが、本誌が今年で終わるというのでついに完結をうちも迎えるかもという…感慨深いものです…。ぜひぜひ、最後まで着いてきてくだされば嬉しいです!! (2月2日 8時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 12章完結おめでとうございます!!もう3年ですか?!そんなに経ってる気がしないです笑。呪術本誌追えてないですけど、鼻毛太郎さんの作品は追って行きます!!! (2月2日 0時) (レス) @page50 id: 9a8c06c139 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 無印さん» マインドに関しては五条をも凌駕する最強ギャル堪能して頂き誠に感謝です😭🙌混沌とする本編、まだまだギャルのギアは上がり続けるのでぜひお楽しみに!!🤍 (11月9日 8時) (レス) @page19 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年9月25日 8時