【呪術廻戦】ギャルと呪術-12-

564：ギャルと五つ巴 ページ14

虚空のような穴から滑り出てきたAの姿に、誰もが驚いていた。
不気味で表情もいっさい変えない、あの乙骨でさえ、Aの登場に微かに眉を開いている。

脹相が虎杖に「今の…」と耳打ちをする。
虎杖はすぐさま首を横に振った。
Aの術式じゃないと思う。
そもそも、Aは術式を持ち合わせていない。

じゃあ、今の空に開いた穴から現れたのは一体。

「それで、これは何の最中かな」

あんまり見た事ない面子の組み合わせだけど。
Aは言いながら、羽織っていた黒衣を脱ぐ。

「『北斎』」

聞き慣れない単語がAから発されたと思えば、再びあの黒い穴が同じ場所に出現する。
どう見てもAの術式ではない。
しかし、それが呪術でなくてなんなのか。

Aはその穴の中に、黒衣を投げ入れた。
黒い穴と共に消えた黒衣。代わりにAの手の中にあったのは、合金性のグローブであった。

「一応聞くけど、見逃してくれって言ったら見逃してくれる？」

まさか、Aも参戦するというのか。
虎杖の思惑はまさにその通りのようで、Aの言葉に直哉と乙骨の空気が明らかに変わった。

Aが一体自分にとって味方なのか敵なのかは分からない。

しかし、彼女にはその気でかからないと、頭から丸ごと飲み込まれてしまうというのはどちらにせよ明白。
直哉が微かに舌打ちをしてみせる。
探していたのは確かなものの、厄介な出方をされたな。

「だよねぇ」

いつも通りの軽い声音と明るい笑顔。
それなのに、彼女は片腕ずつ順番に合金のグローブを嵌めて、いつでも戦闘が始めれる姿勢を取っている。
表情と行動が一致していない。


これには、流石の虎杖も冷や汗を流した。


もしかして、必ずしもAが味方って訳じゃないのか…？


今まで考えたこともない予感が過ぎる。


術式のないAって、どのくらい強いんだ…？






「じゃあ、始めよっか」





Aの言葉。
その後一秒間、その世界から一切の音が消える。

二秒のカウントを刻む時、音が世界に戻る。

走り出した虎杖を追う乙骨。
乙骨を阻もうと術式の姿勢をとる脹相。
脹相の顔面目掛け合金纏う拳を打とうとするA。
その間に滑り込んだ直哉が、Aの腹部にカウンターを入れようとする。



乱戦。



直哉のカウンターに気づいたAは、早い判断で脹相へ打つつもりだった拳を引っ込め、背後へ倒れるように体を逸らして直哉の拳をかわす。

「なんちゅー体幹してんや」

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