006: キスはしない ページ7
「……」
彼女が『待って』と掌をボクに見せる。
今度は一体なんだ、今いいところだったのにと若干機嫌を損ねたボクは彼女の視線先をたどる。
店内の客に混じり、余計なものが入り込んでいた。
カウンターを挟み店員に何やら喋り掛ける二人の男。
あー…♧
至極面倒そうに眉を下げる。
私服で客を無闇に刺激しないようにしているが、そういう人間には見てわかる。
警官だ。
気づかないふりをして、耳を澄ます。
「殺人…!?」
「あまり大声を…、この近辺で五名程惨殺された状態で発見されましてね…。」
しっ、と店員に口を封じさせ警官は述べる。
喧騒の中に声を忍ばせていたが、普段闇で生活する自分に聞き分けられない声でもない。
「その中の一人が重症ですが意識があり、犯人の特徴をもとに現在近辺を巡回中でして」
顔には出さないものの、眉に力が篭もる。
まさか一人逃していたとは。
ついてないな、と内心独りごちる。
「はぁ…、それで、犯人の特徴というのは、」
彼女は不審な2人の客(恐くそう見えているだろう)に、なんだと眉を寄せていた。
それをボクは、彼女の頬に片手を添え「ね、こっちに集中しなよ♢」と顔を向かせる。
「長身で、狐顔…顔に妙なペイントを施していた男です」
知りませんかと問う警官に、店員は一瞬考えたがすみませんと首を横に振った。
店員はすでに来た時と交代をしている。奥で座るボク達をよく覚えていない。
もしくは、面倒ごとを避けたい…か。
「そうですか。一応、店内を見させて頂いても宜しいですか?」
「構いませんが、お客様を刺激しないように。お陰で客足が遠のいたとなっては困りますからね。」
店員の言葉に、警官は感謝の意を述べると店内を回り始めた。
知らないフリ、知らないフリ…♧
彼女の青い瞳にボクの瞳が映り込んだとき。
グッ___、突然首に腕が回されたかと思うと、彼女の顔それと唇が近付いた。
彼女の髪からふわりと香水の匂いが香る程近い。
このまま、彼女の後頭部に手を添え近付けば唇同士が重なる。
今は、その一歩手前で止められている。
「何し、」
「動かないで。キスしてるフリを続けて。」
ボクを見ているふりをして、片目でその奥の警官を見ている。
鋭い瞳、確実に警官の動向を探っている瞳。
警官がチラリとボク達を見て、真横を通り過ぎる。
彼女は瞳を丸くしているボクを見て、面白そうにニヤリと笑った。
この女____ボクが殺人鬼だと、気づいている♤
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鼻毛太郎(プロフ) - りささん» コメントありがとうございます!🙌これから読み始めるという段階でしょうか、長いシリーズですので暫くの暇潰しになって頂ければ幸いです😌ちなみに私は書いておきながら、覚えておりません!笑 そんな作者ですが、是非お付き合い頂けるとありがたいです! (2月19日 23時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
りさ(プロフ) - 私のところはかあさんのお腹の中から来るのよって言われました。生々しい、、、 (2月19日 23時) (レス) id: 53f4f6e8f1 (このIDを非表示/違反報告)
みな - 赤ちゃん、、私は親に聞いたら「ん?掃除機からぽんっ!!ってうまれたよ」って言われました。(うちの親おたまがおかしi(( (2020年12月1日 17時) (レス) id: f5cf3e679c (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ゆゆさん» よくお分かりで…!いつか気づく方が出てくるだろうなと心待ちにしていたのですが、ついに…思わず「きた…!」と言ってしまいました。お分かりの通りとても、、、好きです、、、 (2020年10月10日 23時) (レス) id: 2a028e4c13 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 主さんさてはジョジョ好きですね? (2020年10月10日 20時) (レス) id: 861ee0d781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年5月24日 15時