人間味しかない貴方が好き② / 霊幻新隆 (ページ5)

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▼4話ページ5

｢はい｡はい｡わかりました｡明日の朝までですね｡了解です｡失礼します｣

私は隣町の大きなビルの中にある会社に勤めている｡

少し前からOLとしての人生を歩んでいるが､その点に関してさほど生活に変わりはない｡

家に帰ってきてまで仕事の電話がかかってくるのは正直だるいけどそれはしょうがないことだ｡

パソコンを開きついでにメールを確認すると､久しぶりにモブくんから連絡が来ていた｡

『お久しぶりです｡師匠とはうまくやっていますか｡
急で悪いんですけど､よければ今夜食事でもどうですか｡師匠はどっちでもいいです』

簡潔な文章に師匠はどっちでもいいです､という最後の一文に笑ってしまう｡

今は6時半｡
定時が5時半なのでいつもこんな感じだ｡

『久しぶりだね｡ぜひ｡近況は会ってから話すね｡8時頃からでいいかな』

返信を送信する｡

ここからまたメイクだの服だのを準備しなくちゃいけなくなるけど､モブくんとなら気を抜けるのでそこまでこだわらないで済む｡

.

と思っていたのにも関わらず､着いたのは高級そうなレストランだった｡

モブくんも仕事終わりなのかスーツなのに対して私はそこらへんに着ていけるようなラフなニットワンピースだ｡

私だけ浮いてしまっている｡

｢え､モブくん｡私は聞いていないよ｣
｢大丈夫です｡そのワンピースも気張った印象を感じさせないのに上品で似合ってますよ｣
｢大人になってから嘘をつくのが上手くなってしまったねモブくん｣

大人になって随分雰囲気が変わったモブくんはきっとモテるのだろう｡

だいぶ色っぽくなったし背も高い｡
少し筋肉質なのは中学の頃の頑張りが多少影響しているのだろうか｡

なんていうか､こなれ感が出ている｡

椅子に座ってメニューを開く仕草もなんだか師匠に少し似ていた｡

｢それで､師匠とはどうなんです｣
｢…いきなり核心をつくのはイケメンだから許されることだよ｣
｢僕､イケメンって言われますよ｣
｢いつからそんなふうになったかな君は｣

そんなことを言っておきながらも､前より自分に自信を持ったように見えたモブくんに少し安心した｡