ずっと、一緒に #2

・ ページ5

・




「うぅ、、」

ODで緊急入院してそのまま行った検査で、海人が子どもの頃から戦っている病の治療が必要だと分かった。担当医との相性が良く、家を建てるのにこのエリアを選んだのも、海人が子どもの頃から通っている病院が近いからだ。

「しんどいね、、吐き気どめ効くといいね、、」

海人は副作用が強く出るタイプで、制吐剤を入れても1日に何度も嘔吐してしまう。特に今回は精神的な落ち込みが強く、調子の良い日は会話がつながるが、天気の悪い日や、体調が悪い日は急に泣いてしまったり、パニックを起こすことがあった。

「あと4日だよ」

声をかけると、ボロボロと涙を零して、呼吸が浅くなる。

「辛いね」

今日は午前中で仕事を切り上げて、午後は海人に付き添っている。病院のスタッフの話だと、家族が面会に来ている時間は落ち着いてるのだと言う。

「のえるくん、」

名前を呼んでもらえるのは、如恵留くんだけだよ、と担当医から言われた。それが少し嬉しくもあり、不安だった。

「昨日ね、ちゃかちゃんと松倉が連絡くれたよ。お見舞いは行けないけど、退院したらうちに遊びに来てくれるって。楽しみだね」

仲のいい友だちの名前には反応を示す。早く会わせてあげたい気持ちもあるが、今は家族以外の面会を断っている状態だ。




「のえるくん」

吐き気が落ち着いて顔を拭くと、細くなってしまった両手を伸ばす。その手を取って、そのまま背中を抱くと、ゆっくり身体の力を抜いた。

「頑張ってるね、偉いね」

「かえりたい」

「そうだよね。元気なったら帰ろうね。待ってるからね」

「でも、、、」

「んー？」

「おれ、迷惑、だね」

「迷惑じゃないよ。海人がいないと、寂しくて僕が困るの。だから、早く帰ってきてね」

「でもね、」

今日は海人がよく口を開く。
何か伝えたいことがあるのかもしれない。

「俺、、薬、なんで、いっぱい飲んじゃったか、分かんなくて、、飲もうって思ったけど、いっぱい飲む気はなかったし、、飲んじゃだめなのも知ってる、、だから、また、やったらどうしようって、、怖くて」

やっと出てきた海人の本音を、一言も聞き漏らすまいと耳を傾ける。シクシクと泣いてしまった海人の背中をゆっくり摩った。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す