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「はぁ、」

自室の机の引き出しを開ける。そこには赤いラバータグが入っていた。つけるつけないが、いいとか悪いとか、そう言うことを思ってるわけじゃない。ただ、これをつけてどこにでもいける元太と松倉がずっと羨ましかった。ただ一歩勇気が出なくて、どこにも行かないんだからと言い訳を重ねてきた。

「この時か、、」

袋を開けて、中の紙を出す。ペンを持っても、手が動かなくて、意を決してそれを持ってリビングに向かった。

「のえるくん」

「ん?どうしたの?ゲームしてるのかと思った」

「あの、」

「なに?」

「これ、、なんて、書けばいいの、、のえるくん書いて」

ペンとカードを手渡すと、優しいく微笑んでそれを受け取ってくれる。

「明日、持って行くの?」

「俺も、どこにでもいけるようになりたい」

「そっか。そうだよね。大丈夫。海人はどこでも行けるよ」

そう言いながら、綺麗な字でペンを走らせる。

“右足に義足を使用しています”

「これでどう?」

「のえるくんの、連絡先書いて」

「ん、、そっか。わかった」

「呼んだら、きてくれる?」

「どこでも行くよ」

そう言うと、安心したように息を吐いて、下を向いたまま笑顔を作った。

「明日、楽しみだね」

「ん」


・・・・・・・・


「どうする?ちゃかちゃんたちの駅まで車で送る?それとも一緒に電車で合流するまで行こうか」

最寄駅まで送ってもらって、引き込みに車を停める。

「んー、大丈夫。電車でいく。ひとりでいくよ」

リュックに昨日書いたカードをつけて、薬をいれて、クラッチを持つ。ICカードは昨日のうちに兄がチャージをしておいてくれた。

「手帳持った?」

「うん」

「何かあったら我慢しないで、ちゃんと言うんだよ」

「わかった」

「ちゃんと水分とってね」

「わかった」

「あと、お昼ご飯は、」

「のえるくん」

心配が止まらない兄の顔を見る。

「のえるくん、大丈夫、、俺、頑張るよ。送ってくれて、ありがとう」

そう言うと兄は優しく抱きしめてくれて、最後にもう一度、辛くなったら連絡してね、と言った。

「いってきます」

あの土砂降りの日に帰ってきて以来初めて、ひとりで電車に乗った。

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イカ(プロフ) - 6chan様:コメントありがとうございます!見つけていただけて、嬉しいです。のえんちゅが兄弟だったら、、と考えた末にたどり着いた関係性でした!私も気に入っているフレーズなので、気づいていただけて嬉しいです! (2022年4月22日 5時) (レス) @page26 id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
6chan(プロフ) - 先日こちらを見つけて、一気に読ませていただきました。「自分が滞りなく生活することが、兄の1番の安心材料であることを知っている」って関係、めっちゃいいですね!! (2022年4月21日 0時) (レス) @page20 id: f726c31193 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - ファンタ様:ありがとうございます!応援励みになります。これからもよろしくお願い致します! (2022年4月5日 8時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ファンタ - 移行おめでとうございます。また設定を書いてくださりありがとうございます!これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2022年4月5日 7時) (レス) @page2 id: 491e87fbb7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イカ | 作成日時:2022年4月5日 6時

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