・ ページ11
・
「はぁ、」
自室の机の引き出しを開ける。そこには赤いラバータグが入っていた。つけるつけないが、いいとか悪いとか、そう言うことを思ってるわけじゃない。ただ、これをつけてどこにでもいける元太と松倉がずっと羨ましかった。ただ一歩勇気が出なくて、どこにも行かないんだからと言い訳を重ねてきた。
「この時か、、」
袋を開けて、中の紙を出す。ペンを持っても、手が動かなくて、意を決してそれを持ってリビングに向かった。
「のえるくん」
「ん?どうしたの?ゲームしてるのかと思った」
「あの、」
「なに?」
「これ、、なんて、書けばいいの、、のえるくん書いて」
ペンとカードを手渡すと、優しいく微笑んでそれを受け取ってくれる。
「明日、持って行くの?」
「俺も、どこにでもいけるようになりたい」
「そっか。そうだよね。大丈夫。海人はどこでも行けるよ」
そう言いながら、綺麗な字でペンを走らせる。
“右足に義足を使用しています”
「これでどう?」
「のえるくんの、連絡先書いて」
「ん、、そっか。わかった」
「呼んだら、きてくれる?」
「どこでも行くよ」
そう言うと、安心したように息を吐いて、下を向いたまま笑顔を作った。
「明日、楽しみだね」
「ん」
・・・・・・・・
「どうする?ちゃかちゃんたちの駅まで車で送る?それとも一緒に電車で合流するまで行こうか」
最寄駅まで送ってもらって、引き込みに車を停める。
「んー、大丈夫。電車でいく。ひとりでいくよ」
リュックに昨日書いたカードをつけて、薬をいれて、クラッチを持つ。ICカードは昨日のうちに兄がチャージをしておいてくれた。
「手帳持った?」
「うん」
「何かあったら我慢しないで、ちゃんと言うんだよ」
「わかった」
「ちゃんと水分とってね」
「わかった」
「あと、お昼ご飯は、」
「のえるくん」
心配が止まらない兄の顔を見る。
「のえるくん、大丈夫、、俺、頑張るよ。送ってくれて、ありがとう」
そう言うと兄は優しく抱きしめてくれて、最後にもう一度、辛くなったら連絡してね、と言った。
「いってきます」
あの土砂降りの日に帰ってきて以来初めて、ひとりで電車に乗った。
172人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「TravisJapan」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イカ(プロフ) - 6chan様:コメントありがとうございます!見つけていただけて、嬉しいです。のえんちゅが兄弟だったら、、と考えた末にたどり着いた関係性でした!私も気に入っているフレーズなので、気づいていただけて嬉しいです! (2022年4月22日 5時) (レス) @page26 id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
6chan(プロフ) - 先日こちらを見つけて、一気に読ませていただきました。「自分が滞りなく生活することが、兄の1番の安心材料であることを知っている」って関係、めっちゃいいですね!! (2022年4月21日 0時) (レス) @page20 id: f726c31193 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - ファンタ様:ありがとうございます!応援励みになります。これからもよろしくお願い致します! (2022年4月5日 8時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ファンタ - 移行おめでとうございます。また設定を書いてくださりありがとうございます!これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2022年4月5日 7時) (レス) @page2 id: 491e87fbb7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:イカ | 作成日時:2022年4月5日 6時