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「疲れが溜まっているんだね。ちょっと心配だから、このまま1晩入院して点滴しましょうね」
看護師に川島を託して、部屋が決まるまで待っていてねと言われた海人は一旦待合室に戻る。
「どうだった?如恵留は?」
「鼻血は止まった。今日は入院して点滴するって」
そこまで言うと海人はボロボロと涙を流して、過呼吸を起こす。夕方で人のいない時間でよかった。
「どうしたどうした、大丈夫だよ。疲れが溜まってるって言ってたんでしょ?大きい病気じゃないから、大丈夫だよ」
人がいる場所で、海人の言葉を引き出すことは難しい。今はとにかく呼吸を落ち着けて、家に連れて帰ってから話を聞こうと思う。
「海人くん、こちらへどうぞ」
短期滞在の病室に案内されて、海人は如恵留の手をギュッと握る。体力の限界だったのか、如恵留はそれでも目を開けなかった。
「出血は、過労が原因だと思います。血液の状態が少し良くないから、ゆっくり休んで、体調を整えましょう」
「大きな病気では、ないですよね」
「経過は観察していきますが、大きな所見はありません。血液検査を精密検査に回しているので、その結果を待ちましょう」
医師に頭を下げて、海人に向き直る。
「海人、一晩だから荷物はいらないだろうけど、飲み物とかだけ俺買ってくるよ。海人はどうする?ここで待ってる?」
そう聞くと小さく頷く。精神的に落ち込んでいて、会話をする余裕はないようだ。
「そうだ、如恵留のご両親に連絡した方がいいんじゃない?海人、メールでいいからそれだけ頑張れる?」
そう聞くともう一度頷いて、携帯を取った。
“のえるくん、過労で一晩入院することになった。今は寝てる”
叔母にメッセージを送ると、すぐに既読がついて返信が来る。電話で折り返しをしないのは、海人のことを気遣ってくれているからだ。
“連絡ありがとう。退院は明日かな?今日は面会間に合わないから、明日のお迎えは私が行くね。夜までお家にいてもいいかな”
“ありがとう。のえるくん喜ぶと思う”
そう返して、また兄の手をギュッと握る。暫くすると、如恵留はゆっくり目を開けた。
「ん、、あれ、かいと?」
その言葉を聞いて、海人はグリグリと如恵留の肩に額を押し付ける。
「ごめん、なんか、記憶が曖昧だ」
言葉を発しない弟を見て、随分無理をさせてしまったのかもしれないと思う。そのまま暫く待っていると、海人が口を開いた。
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イカ(プロフ) - 名無し様:コメントありがとうございます。毎日チェックしていただけるなんて、嬉しいです😍 (2022年4月3日 20時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 一気に読ませていただきました。💚さん、一生懸命で応援したくなるし、🤍さんも弟思いで本当にいい人!更新毎日チェックしちゃいます(笑)楽しみにしてます!! (2022年4月3日 13時) (レス) @page42 id: 45bee0f627 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - みく様:温かいお言葉、ありがとうございます!もう少し続く予定ですので、お付き合いいただけたら嬉しいです! (2022年4月3日 6時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - 昨日から読ませて頂いています。もっと早く出会いたかった!と思うぐらいこの作品大好きです。更新楽しみにしています!! (2022年4月2日 21時) (レス) @page42 id: 12bc81e91e (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - ファンタ様:コメントありがとうございます。作成させていただきます! (2022年3月27日 17時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年3月26日 14時