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「ぁぁぁあああああああ!!やめてぇぇえええ!」
突然松倉の声が響き、パソコンに向かっていた吉澤が駆け寄る。松倉は点滴に繋がった腕を握りしめて、パニックを起こしていた。
「松倉、、大丈夫だよ。嫌なことする人はいないよ」
「やだ、やだやだやだやだ、、、やだよ、、やめて、、」
全く目線が合わず、松倉は過去の恐怖の中にいる。
「痛いっ、、やだ、んん、、、やだよ、、」
身体を捩って、何かから逃れようとする、手を握ろうとしたが、それは跳ね返されてしまった。
「まつくらー、だれもいないよー。しーくんだよー」
声をかけることしかできず、その視界に映ることを待つ。暫くすると、松倉から身体の力が抜け、放心したように涙を流し続けた。
「まつくら」
優しく名前を呼ぶと、ゆっくりと吉澤の方を向く。そして、助けを求めるように声を出した。
「し、ず、、」
「閑也だよ。大丈夫。怖いことはないよ」
そう言って拘束を解き、抱きしめると松倉はそこから逃れようと力を込める。
「どうしたの?ぎゅーってしちゃやだ?」
「ち、が、、でも、、おれ、きも、ちわるい、」
「大丈夫だよ」
「おれ、思い出した、、、こどもの、ころは、何されてるか、、わかんなくて、怖いだけだったけど、、わかった、ど、しよ、、おれ、も、なんで、」
「辛かったね。怖かったよね。大丈夫。だからって松倉のこと嫌いになる人も、汚いっていう人もここにはいないよ。みんな松倉の味方で、松倉のこと大好きなの。このことを、みんなに言うかどうかは、松倉が決めていいよ。俺は協力する」
「っ、、、ど、しよ、、怖い、、言うのも怖い、、でも、隠し事も、したくない、、」
「そっか。そうだよね。じゃあさ、ちょっと辛いこと思い出しちゃったって言えばいいんじゃない?」
「で、も、、」
「もし、聞きたい人がいたら俺から伝えようか。でもね、絶対松倉のことみんな守ってくれるからね。大丈夫」
「ん、、、そ、して、、」
震える身体を摩りながら、今後のことを考える。おそらく松倉には、まだまだ鎮めている辛い記憶が山ほどある。その度に苦しんで、涙を流さなくてはいけない。
「ずっと、俺たちが一緒にいるからね」
そういうと、ようやく身体の力を抜いて長く息を吐く。
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作者名:イカ | 作成日時:2022年5月9日 16時