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熱が下がらないこと、松田がいないこと、川島がいないこと、いつもと違うことが重なって、松倉の心は限界だった。
「大丈夫、大丈夫。いいよいいよ、落ち着くまで泣いていいからね」
声を上げて泣き出してしまった松倉の背中を抱いて、大丈夫だよ、と声をかけ続ける。頓服を飲ませたいが、今は難しいだろう。
「先ご飯食べてていいよ」
「待ってるよ。大丈夫だから」
「そっか、ありがとう」
5分ほどすると、松倉が身体の力を抜く。
「松倉、身体しんどいけどね、朝ごはん少しだけでもいいから食べようか。ちゃかが雑炊作ってくれたよ」
そう聞くと小さく頷いたので、立ち上がる背中を支えた。
「先にこれだけ飲めるかな」
頓用の安定剤を手渡すと、震える手でそれを口に運ぶ。口に入れるまでに時間ががかかったが、溶けるまで我慢することができた。
「ご、め、、ん」
「頑張ったね、みんな一緒だから、大丈夫だよ」
薬が効いて、漸く松倉の身体から力が抜ける。宮近が小さな器に盛った雑炊は食べることができて、薬はみんなに励まされてなんとか飲み込んだ。
「のえる、は、?」
「連絡がないんだよ。でもね、絶対帰ってくるから大丈夫だよ。トリプルカイトは午前中オフコールだし、ゆっくり休んでね」
「俺部屋で寝るわ」
「わかった」
「松倉はソファーで寝ようか。ちゃかちゃんは?」
「俺もリビングいるよ。資料みる」
「分かった」
「ちゃか」
集中して資料を読んでいると、今にも消えそうな松倉の声が聞こえてくる。
「ん?どうしたの?」
「ザワザワ、、する、」
「そっかそっか。おいで」
ギュッと抱きしめると、長く息を吐く。気を張っていたのかもしれない。
「気づけなくてごめんね」
「ううん、、違うの、、ごめん、、」
「如恵留帰ってこないね」
「うん、、心配に、、なっちゃって、、」
「そうだよね。俺もだよ」
少し落ち着くと、松倉は宮近の隣にピッタリくっついて一緒に資料を見ていた。
「松倉、飲み物取ってくるから待ってて」
そういうと松倉はギュッと宮近の腕を掴む。
「一緒に行く?」
小さく頷いたので一緒に立ち上がって、手を繋いでキッチンに向かった。
「松倉も飲む?」
応答はなかったが、オレンジ色のマグカップにもお茶を入れて、手を引いた。松倉は、最近使っていない青のマグカップを見つめていた。
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イカ(プロフ) - Qさん» コメントありがとうございます!!とてもうれしいです😭この作品の手があまり進んでいなくて、、、申し訳ありません。書くのをやめたわけではないので、お待ちいただけると嬉しいです💦 (8月24日 22時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
Q - また最初から読み返しています。やっぱり好きです!いつか続き読めるときが来たら嬉しいです (8月16日 15時) (レス) id: 857d18a548 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - ファンさん» もったいないお言葉、ありがとうございます😭更新頻度にムラがあって、申し訳ありません💦楽しんでいただけるよう、頑張ります! (2023年3月13日 8時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ファン - 更新ありがとうございます!イカさんの作品が1番好きです! (2023年3月13日 1時) (レス) id: fcc1fe19ad (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - Qさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます!少しづつ書き溜めておりまして、もう少し溜まったら更新させていただきたいと思っております!待っていただけているとのお言葉、本当な嬉しいです。もう暫しお待ちください! (2023年2月12日 21時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年6月16日 5時