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「最後にお母さんと会ったのはいつですか?」
「最後、、え、、っと、最後は、、」
「言えないんですか?」
高圧的な言葉に、松倉の涙が止まらなくなる。それでも恐怖のためか、取調官から目を離すことはなかった。
「おぼ、えてなく、て、、」
「母親と会ったことも覚えていないんですか?言えないだけではないですか?」
「すみません、僕から答えさせてください。彼は小学校1年生の時に育児放棄と虐待で保護されています。発見された時の状態や年齢を考えると、最後に母親に会ったのがいつか分からないのは、仕方がないことかと」
「そんなことは、知っているんですよ。その後、いつ会いましたか?と聞いているんです」
そんな聞き方しなかっただろうと、川島は思ったが、ここで自分が怒ってしまっては松倉がもっと不安になってしまう。つとめて冷静に、優しく松倉に声をかけた。
「松倉、保護された後、ママに会った?この間捕まえるまでに」
そう聞くと暫く考えて、声を震わせながら口を開く。
「会ってない」
「そうですか。では、もう一つ質問を。彼女はあなたにも違法薬の使用歴と所持があると主張しています。クスリ、使ってる?」
そう聞かれると松倉は過呼吸を起こし身体が揺らぐ。その背中を抱き止めて、川島は取調官を見つめる。
「健康診断の結果をお渡ししてあると思います。組織に所属してから、違法薬の使用が陽性になったことはありません」
「外部の健康診断、まして組織内で実施している健康診断など、私は信じていません。組織組織と言うが、国家予算を使って子どもを集めて、結局何をしているんですかね。私はあなた達の組織を信じていない。だから、健康診断も、実績も、何もかも信じてはいません」
そういう見方があるということは分かっている。そもそも活動の詳細を公表していないし、存在自体も大っぴらにはしていない。それでも、市民や警察、自衛官を守るために戦地に赴いている自分たちの活動を否定されると、流石の川島も苛立ちを覚えた。
「いま、君の部屋に家宅捜索が入っている。母親はぬいぐるみに昔、薬を入れておいたと言っているんだ」
ぬいぐるみ、と聞いて松倉がバッと川島を見る。
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イカ(プロフ) - ナツメ様:コメントありがとうございます。あたたかいおことば、、嬉しいです!!今後もよろしくお願い致します。 (2022年5月4日 9時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - 初めまして!以前からイカ様の作品を拝読していました。今作も素晴らしいです!本当におもしろくて神って実在したんだなって本気で思いました。筆も早くて尊敬します。これからも頑張ってください! (2022年5月3日 22時) (レス) @page9 id: 8dc454fb00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年5月3日 17時