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川島を見送って、宮近が口を開く。
「なんで、松倉がそんな辛い思いしなきゃなんないの。松倉は何も悪いことしてないよ」
「なんでだろうね、、、でもさ、俺たちにできることは、一緒にいることだけだし、それが一番必要なことだって思うよ」
「そうだよね」
「まつくらー?体調大丈夫?フラフラしてない?」
声をかけると、驚いたのかガタンと何かが落ちる音がする。
「松倉?大丈夫??」
『だ、いじょぶ、、もう出る、、』
「待ってるね」
そう声をかけてブースを離れて待つ。しかしなかなか松倉は出てこなかった。
「あ、」
真っ赤に染まった自分の腕と、床を見て驚く。川島に声をかけられるまで、意識をしていなかった。
「ど、しよ、、」
こんなに擦って血を流していたら、怒られるかもしれない、もう見放されてしまうかもしれない。そう考えたら怖くて怖くて、どうにかしなきゃとシャワーを当てる。それでも血は止まらなくて、呼吸が乱れた。
「ん?」
水の音に混じって、松倉の浅い呼吸が聞こえた気がした。心配になった川島は、大きめのバスタオルを持って、もう一度ブースに向かった。
「松倉?大丈夫??あけていい?」
川島の声が聞こえた。みっともないとか、恥ずかしいとか、そんかことはもうどうでもよくて、ただ助けて欲しくて、でも怒られたらと思うと怖くて、身動きが取れない。
「まずシャワー止めてごらん?」
いっぱいいっぱいになって動けないのであろう松倉に、ひとつづつ指示を出す。少しすると、シャワーの止まる音がした。
「タオル持ってきたから、とりあえず羽織って出ておいで」
細く空いたドアからタオルを渡して、また少し離れる。暫くすると出てくる音がして、ラフな部屋着で真っ白な顔をした松倉が、タオルで腕を押さえながら出てきた。
「着替えできたね。髪乾かしてあげるからおいで」
そう声をかけると、ボロボロと涙を流して、ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返す。何かあるのだろうと思って優しくタオルを解くと、いつも洗いすぎてしまう腕から血が流れていた。
「あらら、洗いすぎちゃったね。痛いから、さきにしーくんに処置してもらおう」
そう言っても何も応えられずに、ごめんなさい、と繰り返す。髪を乾かすのは一旦後にして、謝り続ける松倉の手を引いてリビングに戻った。
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イカ(プロフ) - ナツメ様:コメントありがとうございます。あたたかいおことば、、嬉しいです!!今後もよろしくお願い致します。 (2022年5月4日 9時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - 初めまして!以前からイカ様の作品を拝読していました。今作も素晴らしいです!本当におもしろくて神って実在したんだなって本気で思いました。筆も早くて尊敬します。これからも頑張ってください! (2022年5月3日 22時) (レス) @page9 id: 8dc454fb00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年5月3日 17時