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「こちらへどうぞ」

担当者が呼びにきて、検査室へ移動する。そこまでは川島に手を引かれてスムーズに移動できたが、ドアの前で動けなくなってしまった。

「松倉?」

「ご、め、ん、、」

涙を溜めた松倉の表情を見て、担当者に少し待ってもらうように伝える。松倉の状態については伝えてあるので、快く受け入れてくれた。

「ごめん、なさい、」

「松倉、大丈夫。待ってくれるって。落ち着いてから入ろう」

怖くて震えてしまう手を、自ら握りしめる。その緊張を解くように背中を摩った。

「ご、めん、、たぶん、、むり、だから、、手、ひっぱって」

「大丈夫?」

「うん、、頑張らなきゃ、」

スッと息を吸い込んだ松倉の腕を引くと、ストンと部屋の中に入ることができた。

「偉い偉い。頑張ったね」

目に涙を溜めたまま、検査官の向かいに座る。

「お名前をお願いします」

「松倉、、海斗、です、」

「身分証の提示をお願いします」

頭の中が恐怖でいっぱいの松倉は、その言葉に応じることができない。

「松倉、ID出して?持ってきたよね」

川島がバッグを叩きながら伝えると、焦ったように動き出して組織のIDカードを提示する。

「コピーを取らせてくださいね」

その言葉に頷いて、必死に心を落ち着けようと深呼吸を繰り返す。

「ありがとうございました。しまっていただいて大丈夫ですよ」

頷いて、IDを鞄に戻す。綺麗に整頓されたバッグは、松倉の繊細な性格を表しているようだった。

「それでは、DNA鑑定のため、頬の内側の粘膜を採取しますね。綿棒でちょっと擦るだけなので、痛くないですよ」

「松倉、口あけて」

検査官の手が肩に触れるとビクッと身体を揺らして、身を固める。

「ごめんね、びっくりさせちゃった。大丈夫、すぐ終わるからね」

優しい言葉も受け入れられずに、ボロボロと涙が溢れる。終わりです、と声がかかると頭を抱えて、ごめんなさい、と繰り返した。

「ありがとうございました」

川島が代わりに挨拶をして、松倉を控え室に連れて行く。様子を見ていた担当者が、検査中に部屋を用意してくれていた。

「落ち着くまでここを使ってくださいね。そのまま帰っていただいて大丈夫です」

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イカ(プロフ) - ナツメ様:コメントありがとうございます。あたたかいおことば、、嬉しいです!!今後もよろしくお願い致します。 (2022年5月4日 9時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - 初めまして!以前からイカ様の作品を拝読していました。今作も素晴らしいです!本当におもしろくて神って実在したんだなって本気で思いました。筆も早くて尊敬します。これからも頑張ってください! (2022年5月3日 22時) (レス) @page9 id: 8dc454fb00 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イカ | 作成日時:2022年5月3日 17時

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