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「おしまいだよ。絆創膏、貼っとくからね。よく頑張ったね」
「まつくらー、偉かったね。頑張ったね」
「えらく、ない」
「偉いよ!苦手なこと頑張ったんだもん。偉いよ」
「よし!ミーティングするか!」
松倉は川島の隣にすっぽりと収まったまま、ミーティングを始める。案の定、任務の話が始まると松倉は落ち着いてきて、部屋を出るときに川島が手を引けば、問題なく車にたどり着くことができた。
「松倉、つよしくんのところ行こうか。予定にはないけど、この後少し時間あるんだって」
相変わらず長めのシャワーで、いつもの左腕と、点滴をした右手が真っ赤になってしまった松倉に声をかける。
「つよしくん、」
「ちょっと、話聞いてもらおうよ」
前線を離れた後は、カウンセラーとして話を聞いている。宮近と松倉は定期的にカウンセリングに行っていた。
「ん、、わかった、話せるかな」
「一緒にいく?」
「うん、、、」
吉澤の予想通り、松倉は玄関で動きを止める。堂本にもその旨伝えてあるため、来なかったら迎えにきてくれることになっていた。だから、焦らずに待っていてあげなさい、と。靴を履いて、ドアノブに手をかけたまま動きを止めた松倉の呼吸が、徐々に浅くなっていく。
「松倉、一回座る?」
そう聞くと首を横に振って、ドアを開けた。吉澤が後ろから出ると、所在なさげに手のひらを握ったり閉じたりを繰り返す。その手を優しく取ると、きつく握り返してきた。
「大丈夫、一緒にいるからね。絶対俺が守るからね。玄関出れて偉かったじゃん」
そういうと小さく頷いて、俯いたままでも、足を進めることができた。
「どうする?終わる頃迎えに来ようか」
「うん、、」
「大枠はね、俺からつよしくんにも伝えてあるから、自分で話せることから話してごらん?大丈夫だからね」
「しず、、ありがと、」
「またね」
剛の部屋に入るところを見届けて、吉澤は一旦タイガーのフロアに戻った。
・・・・
吉澤に手を振って、いつものように中に入るが、その後自分がどうすればいいのか分からない。靴を脱いだ方がいいことは分かる。でも身体が動かない。
「っ、、」
何もできない自分が情けなくて、怖くて、ボロボロと涙が溢れる。
「海斗」
堂本のゆっくりとした声に、顔を上げる。SHOCKにいる頃から話を聞いている松倉のことを、堂本は取り分け気にかけていた。
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イカ(プロフ) - ナツメ様:コメントありがとうございます。あたたかいおことば、、嬉しいです!!今後もよろしくお願い致します。 (2022年5月4日 9時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - 初めまして!以前からイカ様の作品を拝読していました。今作も素晴らしいです!本当におもしろくて神って実在したんだなって本気で思いました。筆も早くて尊敬します。これからも頑張ってください! (2022年5月3日 22時) (レス) @page9 id: 8dc454fb00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年5月3日 17時