箱庭少女の孤高哀歌【瞬木隼人】Part12

#託す ページ47

井吹「アースイレブンのゴール…お前に託す」



キャプテンに続き、井吹君も西園君に手を差し出しながらそう言った。

普段は井吹君はそんな風にお願いなんてしないから少し驚いたけれど
西園君は小さい身体ながらも大きなガッツで受け止めた。



信助「…わかった！」



西園君は大きく頷いて、彼も井吹君に手を差し出すと
その小さな手で井吹君とハイタッチを交わした。



信助「僕が守ってみせる！」



そう言って頼もしい笑みを浮かべる西園君。

井吹君がいない今、キーパーは彼一人しかいないし
ゴールを守る最後の砦なのだから、きっとプレッシャーとかも大きいはずだ。


それでもそう言えるのだから、西園君もやっぱり凄いや。



井吹君と交代で試合に入る前の準備体操をしている間に
井吹君はベンチに座って、氷のうを挫いた足の上に置いた。


井吹君の足は痛々しく腫れていて、皮膚の色も真っ赤になっていて。

いつしかの私と同じような状態だと思って、触っただけで激痛が走りそうな………



………そこまで考えて、何だか私まであの時の痛みを思い出しそうだったので考えるのをやめた。


でもあの怪我でずっと井吹君はゴールを守り続けていたんだから、凄く頑張ったと思う。

きっと試合中、ずっと痛かったんだろうな……



神童「何故、怪我を隠していた？」



そんな井吹君の元に、神童君が歩み寄る。

第一声に隠し続けていた事を指摘すれば、井吹君からは意地っ張りな態度で跳ね返した。



井吹「お前にだけは心配されたくないからな」

A「い、井吹君……」



…こんな時でも、神童君にはその態度なんだ。


相変わらずのやり取りに神童君も一瞬口元を緩めた気がした。


でもまだその態度でいられるのなら、大丈夫そう。



真名部「そう言えば、グラウンダーの比率が高かったような気がします」



そんな中、真名部君から興味深い報告が。

続いて皆帆君も、自分なりの推理を展開する。



皆帆「確かに、ファラムの選手達は井吹の足にダメージを与えるような攻撃をしていたね…」

A「そう言えば……そうだったような」



……言われてみれば、井吹君はほとんどのシュートを足で止めていたような気がした。

それに妙に井吹君の足に直接攻撃するような、荒々しいプレイも目立ったし……



もしかして……相手は気付いていたのだろうか？


井吹君が足を怪我してしまっている事に。

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