箱庭少女の孤高哀歌【瞬木隼人】Part12

#嫌な予感 ページ43

その後も両者一歩も引かぬ攻防戦は続いた。

ボールがあっちに行ったりこっちに行ったりで、見ているこっちもﾊﾗﾊﾗする。

でもゴール前までには必ず奪われてしまうので、なかなかにもどかしい試合展開が続いた。



井吹「皆帆！プレッシャーをかけろ！」

皆帆「了解！」



そうして今日何度目か、ボールは相手に渡ってしまう(しかも渡ったのは怖い女の人)。

井吹君も珍しくゴール前でDFに指示を出し、皆帆君はボールを持った相手へと向かって行った。



ﾋﾗﾘ『ジャックナイフ！』



だが相手の必殺技により皆帆君は抜かれてしまい
更にはボールは小さい人に渡されてしまった。



うわぁ、あの人さっきからレッドカード貰いそうなﾋﾔﾋﾔする事ばかりするから……ちょっと怖い。

今度は何を企んでるんだろう…？


なんて心配していたけれど、放たれたのはノーマルシュート。

威力は確かにあったパワーシュートだったけれど
井吹君はボールをパンチで弾くと、ﾆｯと歯を見せて得意気に笑った。



井吹「こんなモノか…？もっと来いよ！」



相変わらず強気な人。
確かに実力はあるんだけれどさ。

でも彼がゴールの中心に戻ろうとしたその時
片足を引きずるようにして歩いているのを、私は目撃してしまった。



………井吹君、やっぱり怪我してる…よね？

大丈夫かな、井吹君……
引きずるとなると結構重症なんじゃないのかな…？



なんて井吹君の足の怪我を心配していたら
ふと、今まで微動だにしなかった黒岩監督が動き出した。

監督はベンチからおもむろに腰を上げ、グラウンドにいる剣城君に指示を出す。



黒岩「剣城、やれ」

剣城「…！」



主語の無い黒岩監督の指示に、剣城君は目を見開き驚いた表情を浮かべた。

ただ、対照的にファラム・オービアスの四天王の人達はそれぞれﾆﾀﾆﾀと嫌な笑みで、その反応で何となくやろうとしている事がわかった気がした。

私は膝の上の目をｷｭｯと掴んで、ゴール前の井吹君の方を一瞥した。



………嫌な、予感しかしない。

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