世界征服〜僕らのサーカス〜【イナGO】 VSフィフスセクター編 第陸幕

吸血黒花 327 ページ50

「ありがとうね、井吹」



白竜を僕のベットに寝かせて貰い、僕は井吹にお礼を言うと、彼はこくんと頷いてから黙って眠っている白竜を見つめた。

白竜は今は穏やかな表情をして寝息を立てて眠っている。
この様子なら起きても暴れたりはしないだろう。



……でも、もう今までの様には暮らせないだろうな。


白竜は彼女の血の味を覚えてしまった。
�犁朷豕喚瓩稜塾呂鮖�った彼は、1度その血の味を覚えてしまうと、この世から無くなるまで延々と求め続ける。

そうなってしまったら近付くだけでも危険だ。
白竜の理性が忽ち失われて、きっとさっきのように襲い掛かるんだろう。



どうしようかな…これから。


白竜の症状によっては、もうこの館には暮らせないかもしれない。
彼女と一緒に、暮らせないのかもしれない。

そうなったら僕も、白竜と一緒に出て行くつもりではいるけれど……一体、何処を頼れば良いのだろうか。
何処を宛にして、何処を信じれば良いのだろうか。


彼女ほど、僕達の様な�犂擬圻瓩亡鵑蠹困辰討�れた人はいない。
それは彼女自身もまた�犂擬圻瓩世�らなのかもしれないけれど。

だとしても僕は素直に嬉しかった。
白竜はまだしも、僕の場合は背中に不気味な植物が生えていたから。


この植物はよく周りから蔑まれたよ。
『醜い』だとか『不気味』だとか『気持ち悪い』だとか。

でももっと酷いのはさ、この植物にばかり注目していて僕自身の事を誰も見てくれはしなかった事なんだよね。


周りの人は植物の事だけ反応して、僕にはまるで無関心。
まるで幽霊にでもなったような気分だったよ。



でも、Aだけは違った。


彼女だけは、僕の事も見つけてくれたんだ。


そして他の人に僕の存在を教えてくれた。
此処にいるよって、皆の所まで引っ張ってくれた。


そんな事、今まで無かったから。
僕、初めは嬉しくて嬉しくて。

きっと僕をそうやって見つけてくれるのは、彼女以外誰もいないんだろうな。



此処を出たら、また僕は幽霊になっちゃうんだろうな。

この小説の続きへ→←イドラのサーカス 326

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す