世界征服〜僕らのサーカス〜【イナGO】 VSフィフスセクター編 第陸幕

辻 288 ページ11

此処は敵地で、俺達は戦闘真っ只中。


もしかしたらもっと痛い目に会うかもしれないし

もしかしたらもっと苦しい思いをしなくてはいけないかもしれない。


でも、戦わないといけないんだ。2人を正気に戻す為に。
それはきっとイドラが誰よりも望んでいる事だ。



俺だって今は彼女の仲間だ。

彼女が俺を身を呈して守ってくれたように、俺も彼女に協力しなくては。


それぐらいは、させてくれ。



「……っ……くっ……」



俺は地面に手をつくと、体を起こそうと力を込めた。

だが思いの外力が込められなくって、身体中が痛くって。
半身を起こすのがやっとだった。



寝ていた視線を上に上げ、白竜を見遣る。

しかし視線に映った彼は俺ではなく別の場所を見ていて、俺はその視線の先に思わず息が詰まった。



「イドラ……！」



彼は、イドラの方を向いていた。



彼女は何やらシュウと対峙しているようで、こちらには背中を向けていた。
きっとあっちもあっちで手が出せない状態なのかもしれない。

白竜はそんな彼女を暫くじっと見つめた後
くるりと踵を返して、彼女の方へと向かって行った。



おい、おい…おい。

何でそっちに行くんだよ、お前。
俺じゃ相手にならないって言うのか。



きっとイドラは気付いていない。白竜が近付いている事に。

止めなきゃ。俺が止めなければ。



でなければ、また彼女はっ……！



「……ッの……！！」



言う事を聞かない身体を無理矢理起こし、何とか立ち上がった。

そのまま白竜に向かって駆け出そうとしたが、足が頭に追いついて来てはくれず、そのまま無様な転んでしまった。




……痛い。


なんで、なんでこんな所で転ぶんだ。
格好悪過ぎだろ。



自分で自分が嫌になる。

でもこんな事考えているうちにも、白竜はイドラの方へと向かって行っていた。


また立ち上がろうと力を込めたが、先程のダメージがまだ残っているのか、身体は諦めてしまっているのか。

思うように力が入らず、俺は地べたに倒れたまま恨めしくも白竜の背中を見上げた。



何なんだよ……何で…こんな時に限って、俺は……

俺はただ守りたいだけなんだ……
目の前で苦しんでいる人を、助けを求めている人を。


そりゃ……今回はイドラに半ば強制的に連れられて来たようなものだけど、さ……

でも、こんな俺にも助けを求めたんだよ……


なのに…なのに、こんなザマって………



「ﾊﾊｯ……笑っちまうな」



乾いた笑いが、思わず溢れた。

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