○わかりやすい○ ページ32
ルーデンが去った後、俺達はまたいつも通りの日常を過ごした。
一緒に朝食を食べ、また遠くの方へ出掛け
そして帰って来ると彼女と一緒に本を読む。
ただ彼女は今までと違って腕が使えなくなってしまったようなので、考えた結果、俺が読み聞かせているのだが。
「彼女は言った。『私は貴方が嫌い、大嫌い。だから近付かないで頂戴』
だが少年は食い下がり、彼女の……」
「…」
しかしAは聞いているのかいないのか、ぼんやりと正面を見据えたまま微動だにしない。
その表情もポカンと口を半開きにしたままで、まるで何も考えていないかのようだ。
…どうしたのだろうか。
ルーデンに会ってから、ずっとこの調子なのだが。
まるで魂が抜けたかのように、ぼんやりとしている。
そんな彼女に声を掛けるとビクリと体を僅かに反応させ、慌てた様子で「なぁに?」と首を傾げるのだ。
一体何を考えているのだろうか…と考えれば
やはり浮かんでくるのはルーデンの顔。
彼女はきっと、ルーデンについて考えているのだろう。
「…A」
「はっ、へっ?!」
またぼんやりしている彼女に俺は一度本を音読するのをやめ、彼女に声を掛けた。
するとAはやはり肩を反応させてバッとこちらの方を向き、「どうしたの?」と苦笑を浮かべながら首を傾げた。
「ルーデンについて考えているのか?」
「…………へっ?」
なので疑問をそのまま尋ねてみれば、Aは一瞬キョトンとした顔をした後
見る見る内に顔を真っ赤にさせて、俺から目をそらした。
……わかりやすい。
“
「ちっ……ち、ちちちち違うよっ!!
ぜ、全然っ!!全然違うもんっ!!
もうっ…!ゴウセルったら変な事言わないでよねーー!!」
「本当にわかりやすいな」
まさか此処までわかりやすいとは。
真っ赤になりながらも必死に否定する彼女の頭を撫でてやると、Aは「違うからね…」と途端に弱々しくなり、ハの字に眉を下げる。
ああ、少しからかい過ぎた。
「すまなかった、まさかこんなにもわかりやすいとは思わなかった」
「わっ、わかりやすいって何よぅ…!」
「そのままの意味だ」
頬を膨らませ、ご立腹な様子の彼女を宥めると、彼女は「…そんなにわかりやすいかな」と小声で零した。
…わかりやすい。
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パセリン(プロフ) - *IJu*さん» (*^^*) (2016年7月21日 1時) (レス) id: 9b51e61c30 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - パセリンさん» ご指摘ありがとうございます!早速直しました! いつも見に来て下さってありがとうです… |゚Д゚))) 更新頑張りますっ!! (2016年7月21日 0時) (レス) id: b02a163c50 (このIDを非表示/違反報告)
パセリン(プロフ) - ゴウセルの台詞が、「ああ、降ってるな」が、「ああ、振ってるな」になってますよー! 毎回更新されるのを楽しみにしています!頑張って下さい(*^^*) (2016年7月21日 0時) (レス) id: 9b51e61c30 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - パセリンさん» ありがとうございます!更新頑張りますっ(((o(*゚▽゚*)o))) (2016年5月9日 23時) (レス) id: b02a163c50 (このIDを非表示/違反報告)
パセリン(プロフ) - *IJu*さん» はい!!更新楽しみにしてますね♪頑張って下さい(*^-^*) (2016年4月30日 17時) (レス) id: 9b51e61c30 (このIDを非表示/違反報告)
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