彼女の為なら【七つの大罪】part6

＊嫌いなアイツ＊ ページ1

記憶を操作されたとはいえ、ヤツと恋人関係であったあの頃の記憶は何故か私の中にまだしっかりと残っている。


あの頃の記憶は今の僕から言わせてみれば、最低最悪の日々だったよ。


毎日毎日アイツのツラから始まって、アイツのツラで終わる。

朝はあまり時間がないから少し話すだけ。
で、夜になると一緒に本を読んだり絵を描いたり……本を読んだり。

住んでいた所は本ぐらいしかまともな物が無かったから、いつも本読んでた。


あとそれから…操られていたとはいえ仮にも恋人関係だったのだから
それなりに恋人らしい事も……少し、した。


とにかく外を出る事なんて許されなかったから、僕は小屋の中で何年もヤツと2人で過ごしてた。

あの大嫌いなヤツと一緒にさ。


今の僕がそんな事したらきっと1分も経たないうちにギブアップ。

アイツとは一緒の空間にいるだけで虫唾が走る。


あの無機質な目も。

ﾁｶﾁｶする色の髪も。

女みたいな顔も。

棒読みな喋り方も。



何もかもが、嫌いだ。


大っ嫌い。


タダでさえバカでかい鎧姿の時も嫌いだったのにさ。



それをどんなに正面から伝えても、さり気なく告げてみても、暴力と一緒に叩き込んでも。

ヤツは何故か懲りずに付き纏って来る。



…気持ち悪い。

意味がわからない。





…………………怖い。





何考えてるかわからないから。
何をしたいのかわからないから。

何を見て、聞いて、感じているのか。


どんなに同じ状況下に置かれていても
ヤツと同じモノを見ている感じがしない。

ヤツと同じモノを聞いている感じがしない。

ヤツと同じモノを感じている感じがしない。



どんなに一緒にいてもわからないんだ。

どれがホントのヤツの心なのかわからない。
どれがホントのヤツなのかわからない。


中途半端にアイツを知ってるから、それがとてつもなく怖い。

恐くて、こわくて堪らない。


本物のヤツがわからないのが……怖い。

だけど知るのもまた怖いんだ。




だってアイツは、ゴウセルは。





………………僕は。

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