彼女の償い ページ7
「………持って行こう」
暫くの間、呆然と床にへたり込んでいた僕はそう呟くと、その黒い魔道書も抱えて立ち上がる。
まだ彼女の…リラの魔道書だと断定するには早すぎる。
それで彼女も魔女族だと推測するのも、安直過ぎる。
もしかしたらコレはリラの物ではなく、誰か違う人の所有物で
彼女はやっぱり普通の人間なのかもしれない。
いや…もしこれが彼女の物だったとしても、彼女が何処からか拾ったとかそんな感じで…
魔女族でないけれど、興味本位で持って帰ったって可能性もある。
様々な思考を頭の中で繰り広げた後、僕は自嘲的に笑ってから彼女の家を出た。
そしてそのままキャメロットへと戻ろうと思ったが
その前にもう一つ寄りたい所を思い出し、僕はその村の近くにある森の中へと足を踏み入れた。
−−−
ある程度森の中を進むと、不自然に木の杭が立てられた所に辿り着く。
僕はそこで立ち止まるとその杭を指先でそっと触れ、頬を綻ばした。
「……久しぶり、リラ」
___此処は、リラが埋められた場所だ。
木の杭は彼女が此処に埋まっているんだという目印。
またこうして彼女の元に訪れる日の事を思って、僕が立てたんだ。
…と言っても、本当に来るとは思わなかったけれど。
僕は此処に来る途中で摘んだ小さな花を木の杭のそばに添える。
彼女は喜んでくれているだろうか。
確か花は好きだったはずなのだけれど。
「…ごめんね、何年も会いに来なくって。
ちょっとバタバタしちゃって、ね」
嘘だ。
彼女が亡くなり、〈七つの大罪〉に加入した頃にも来ようと思えばこうして来れたんだ。
だって王様の命令が無い時はほとんど暇してたし。
まぁ、距離的には随分とリオネス王国から離れてはいるけれど、僕の場合は瞬間移動術を使えば一瞬だし。
でも、僕は来なかった。
いや、来れなかった。
………怖かったんだ、また彼女と顔を合わせるのが。
と言っても彼女は死んでいるから、顔を合わせる事が出来るのかと言われたら何も言えないけれど。
でも何となく、何となく彼女は僕を見ているのだと思ったらそれが出来なかったんだ。
だって、僕は彼女を殺した張本人だ。
彼女が許しても、僕が許さない。
この〈罪〉は、僕が死ぬまでずっと背負わなければいけない。
いや、死んだ後も背負ってやるさ。
それが、僕に与えられた唯一の償いなんだから。
68人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
*IJu*(プロフ) - 如月李瑠葉さん» コメントありがとうございます! ツンデレ良いですよねツンデレ(( そんな、天災だなんて…← 僕には非常にもったいないお言葉でず…_( _´ω`)_ (2017年1月9日 12時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
如月李瑠葉 - これも面白いですね!夢主のツンデレっぷりがイイ…天才ですか!? (2017年1月9日 1時) (レス) id: 5cf1189260 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ