彼女の為なら【七つの大罪】part3

彼女の記憶 ページ47

「はーーぁ……人間ってホンットわかんない」



アーサーの所に訪れてから早数時間。
やっと部屋に1人きりになった僕は、溜息と共に零した。


アイツ…あの後何も喋んないでただただ私の顔見ていやがって。
気になって本の内容が頭に入って来なかったよ。つかよく数時間も見れたな。

しかも…僕の事好きなの本当っぽいし。
素直なのは良いけれど、もう少し恥ずかしくない言い方出来ないかな…
まぁ、聞いたの僕だけど。


僕は窓際の椅子に座ると、さっき読んでいた本を開いて続きを読む。

この本は森の中に住んでいる難病を抱えた少女と、1人の少年の物語だ。
この部屋の本棚にあった一冊で、何故か異様に魅力的に感じた。
これからこの2人はどのような運命を辿って行くのか楽しみだ。



『その本、面白いでしょう？』



展開を楽しみにしながらページを捲ると

不意に脳内に響く、懐かしい声。



「………………リラ………？」



思わず部屋を見渡したが、部屋には誰もいなかった。

当たり前だ、だってアーサーが出てから誰も入れてないもん。


…いや、それ以前に

この声の主は………



『私、その本大好きなの。
Aも良かったら読んで』



だけどまた、聞こえたんだ。

彼女の、リラの声が。


……ああ、そう言えば
リラと会って何日か経った頃だっけ。

リラが自分の読んでいた本を、僕に貸してくれて。
狩りと魔術しか取り柄が無かった僕は、それから本が好きになって。


思い起こされる、あの日の記憶。
ソレは僕にとっての小さな幸せで、もう2度と訪れない日々の記憶。

ああ、僕のこの本好きは彼女からだったんだ。
まだ覚えてる。覚えてるよ。
だって親友の彼女の事だもん。



「……リラ」



ふと現実に戻って、僕は本を閉じた。


1度思い出してしまうと、後から後から次々と色んな彼女の姿が思い起こされる。

笑ってる顔、怒ってる顔、悲しそうな顔、苦しそうな顔

泣いてる、顔。


どうして彼女が泣いていたのかは、未だにわからない。
どうして最期に笑っていられたのかも、わからない。


ねぇ、リラ。

アンタはどうして、あの時いなくなってしまったの？



「………また、会いたいな…」



叶わない、虚しい願いを零した瞬間



突如、物凄い震動が起こった。

彼女の戸惑い→←王様の証明

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す