彼の痛み ページ41
行ってしまった。
彼女は行ってしまった。
残された俺は1人その場に立ち尽くした。
上ってきた朝日が辺りを照らし、見上げればよく晴れた空が映り込む。
……Aは、俺の事が嫌いだったみたいだな。
しかも笑いながら言われた。
あんなにも笑っているAを見るのは初めてだった。
Aもあんな笑い方が出来たんだな。
何故だろう、ずっと気になっていた疑問がハッキリとわかったのに、まだモヤモヤする。何処かスッキリしない。
折角彼女から直接『嫌い』と言われたのに。
「…?」
…何だろうか、今のは?
何だか、胸がズキンと痛んだ。
まるで針につつかれたように。
俺は自分の胸元を見て、触れてみる。
特に外傷は無い。何かに刺されたワケでも攻撃されたワケでもないようだ。
では、今の痛みは何だろう?
「……俺は、Aをどう思っているのか」
ふと前に団長に言われた事を思い出す。
あの時俺は自分の答えがわからなかった。
それは今も変わらない。
Aは俺の事を嫌いだとハッキリ告げたが、俺は彼女の事をどう思っているのだろうか。
『嫌い、嫌い、大ッ嫌い!』
___ズキンッ
「……俺は……」
もしかして、
「こんな所で何してんだ、ゴウセル?」
胸元に手を当てたまま考え事をしていると、不意に背後から聞き慣れた声に話し掛けられた。
振り返ると店の扉の前には案の定団長が不思議そうな顔をして立っていた。
腰に手を当て、訝しげに首を傾げてこちらを見つめながら。
「団長、おはよう」
「はよ、ゴウセル。
相変わらず早いな〜、お前」
団長は俺の元まで歩み寄ると大きく伸びをし、腰に手を当てて俺を見上げる。
「んで?こんな朝っぱらから此処で何してたんだ?」
「Aの見送りだ」
「見送り…?」
「つい先程、Aはアーサーの所に行ってしまった」
「アーサーの所って…キャメロット王国か?」
「そうだ」
「マジか」
Aの事を話してみれば驚いたような反応を見せ、困ったようにボリボリと頭を掻いた。
そして正面を見据えると団長は小さく溜息を吐く。
「でも何で?俺そんな話聞いてねーぞ?」
「俺が嫌いだから…らしい」
「あー」
理由を聞くと団長は何処か納得したような顔をして「仕方ねぇなー」と呟く。
そしてくるりと俺に背中を向けて、店の方へと歩みを進めた。
「逃げられちまったな、ゴウセル」
その途中で、そんな事を呟きながら。
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ヒヨリ(プロフ) - *IJu*さん» 偶然でしたか(笑)すみません。人気にはならないけどいい曲ですよね!私も好きです。聴いて下さりありがとうございましたd(≧▽≦*) (2016年1月31日 7時) (レス) id: 2f457c2e04 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - ヒヨリさん» コメントありがとうございます! いえ、ただの偶然です…まさかそのような題名の曲があったなんて…! 因みに聴いてみました!とても素敵な曲ですね(*´∀`)イラストも可愛らしいですし、最近は毎日のように聴いて歌詞を覚えています! (2016年1月31日 0時) (レス) id: b02a163c50 (このIDを非表示/違反報告)
ヒヨリ(プロフ) - ひとつの国のリラちゃんですか?あ、夢主ちゃんの名前の事ですw私の大好きな曲なんですけど…もしかしたら?と思いまして。良ければ聞いてみて下さいませ。(*´ω`*) (2016年1月27日 21時) (レス) id: 2f457c2e04 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - ゆっくりエリー☆(・ω<*)ゞさん» あけましておめでとうございます! お餅は食べられましたか?w 因みに僕はお雑煮の時に3つ食べて以来食べていません(´・ω・`) 七大2期楽しみです!!早く皆の活躍がみたいっ…!! (2016年1月20日 18時) (レス) id: b02a163c50 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりエリー☆(・ω<*)ゞ - あけましておめでとうございます!お餅が食べたい私です…にしても作者様いつもいいとこで切りやがって~wコノヤロウww♪( ´∀`)σ)∀`)ウェwあ、七つの大罪アニメ二期楽しみですね! (2016年1月18日 0時) (レス) id: e070c33a98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*IJu* | 作成日時:2015年7月31日 0時