彼女の為なら【七つの大罪】part3

彼女の免罪 ページ30

「…許す」



そのまま暫く黙って空を見上げていたが
不意に団長がそう呟いた。

僕は視線を団長に移すと団長もこっちを向いてニコリと笑う。



「今朝の事も、今までの事も」

「…今まで、って…」

「決まってんだろ？10年前のお前に対してだ」



団長に言われ、聖騎士時代の思い出が蘇る。


ああ…そう言えば、団長にも僕は散々酷い言葉を浴びせ、酷い態度をとっていた。
だけど団長はそれでも僕の事を『仲間』って言って、変わらず接してくれて。僕がどんなに咎められても上手くフォローしてくれて。
それなのに昔の僕は理解出来なくて、ひたすら冷たく当たっていた。


…まさか、昔の事も許してくれるだなんて。
彼はなんて器が広い男なのだろうか。
それに比べて昔の僕はなんてちっぽけで愚かな存在だったのだ。
リラの事を忘れない為にただただ彼等を傷付けて。出来る事なら過去の僕を消し去りたい。そして全力で謝りたい。『こんなにも馬鹿な僕を許して下さい』と。



「…そう」



だけどちっぽけな僕にはそんな事が出来ないから、返事を返すので精一杯。

団長は目を細めて微笑むと再び視線を夜空に移し、そのまま黙り込む。
その横顔は頼もしく、まさに�狠陳広瓩噺討屬砲佞気錣靴ご蕕鬚靴討い拭�


僕はその横顔に暫く目を奪われた。
その横顔を見ていると、優しい気持ちになれる気がした。

僕は膝の上に顎を乗せると目をそらしたまま小さく口を開き、告げる。



「……ごめん」



自然と溢れたその言葉。
団長はこちらの方を見て目を見張ると、パチパチと瞬きを繰り返した。

そんな団長の方をチラリと僕は見遣ると、抱えた膝をギュッと引き寄せて、続けた。



「…朝の、当たっちゃった事も

…昔の、事も」

「…！」



僕なりに勇気を振り絞り、途切れ途切れに謝罪した。
先ほど団長から許しを貰ったのだが、ただ一方的に許されるだけでは僕の気が済まない。
相手がどれだけこちらを許しても、こちらが苛まれるだけだ。


暫く沈黙が続き、周りの音がやけに大きく聞こえる。
そよぐ風の音、鈴虫の鳴き声
そして〈豚の帽子〉亭で騒ぐ人間の声。
しかし不意にそれらに混ざって、クスクスと楽しそうに笑う少年の声を僕は聞いた。

フッと団長の方を見れば、彼はニカッと嬉しそうに歯を見せて笑い、また私の頭をポンポンと撫でる。



「おう！許す！」




「さっきも許したけどな」と笑いながら付け足す彼につられ

気付いたら自分も、笑みを浮かべていた。

妖精王の見守り→←彼女の謝罪

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す