彼女の為なら【七つの大罪】part3

彼女の悲劇 ページ2

「…ホーク…何やってん…だ！！」



ヘンドリクセンから放たれた絶望の塊を前に、豚野郎は団長の前に仁王立ちした。


……アイツ……何やって……？



「早くどけ！！死ぬぞ！！」



そんな豚野郎に団長は掠れた声で怒鳴るが

豚野郎は微動だにしない。



「お前が死んじまったら、エリザベスちゃんまで死んじまいそうな勢いだからよ。

しょうがねぇだろ」



そして豚野郎は溜息交じりにそう吐いた。


黒い絶望は豚野郎の目前に迫る。



「あーあ…こんなことなら腹一杯残飯食っときゃよかったぜ、ちっ」



わざとらしく舌打ちをすると、豚野郎は前を見据えて、笑ったような気がした。





「…死ぬなよ、ブタ野郎共」





瞬間、“黒死(デッド・エンド)”が豚野郎にぶち当たり、辺りに激しい衝撃波が巻き起こる。

少ししたらそれが治(おさま)り、僕は恐る恐る顔を上げた。



そして、団長の目の前に立っている真っ黒な物体を見て絶句した。



「…ホーク…？」



団長も目の前の黒い物体を不思議そうに眺めながら、フラフラと立ち上がる。


黒い物体は豚のような形のシルエットをしていて、まるで“さっきの豚野郎”のようだ。



「お…前…」



団長がその物体に声を掛けるが

黒いのは何とも腑抜けな音を立てて倒れ、それから立ち上がることは無かった。


………ウソ……だろ……？


アレ…さっきまで、喋ってた豚野郎…なの、か…？



「こんな……ことって…」



ボロボロの王女もヨロヨロと立ち上がり、おぼつかない足取りで豚野郎だった黒い物体の所へ歩み寄る。



「ホークちゃん…起きて…
また…いつものように喋って…

ダメよ……一人勝手にさよならなんて……」



王女は黒い物体の前に行くと座り込み、震える声を絞り出しながらその背を優しく撫でる。

次第に彼女の瞳からは大粒の涙が溢れ出し、それは彼女の頬を伝う。



「あ……ぁ……


あぁああぁあああ！！！」



瞬間、王女は声をあげて泣き出し豚野郎に抱きついた。

涙は後から後から溢れ出て、ポロポロと地面に落ちる。



「うう……」

「師匠が……死んだ…
あんな気のいい奴を…よくも…

くそがぁぁぁあ！！！」



僕は呆然とその光景を見つめる。


そして僕は、震える声で呟いた。



「ウソだ……ろ…」

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