#冷たい表情〜瞬木〜 ページ32
ベンチに座らせ、Aに靴と靴下を脱がせて足の状態を確認する。
Aの足は少し赤く腫れていて、自分でも触れたら痛むようだ。
葵「痛そう…ちょっと待っててね」
空野さんは救急箱を漁り、氷のうを取り出すとAの足に当てた。
A「こ…骨折…?」
葵「わからないわ…」
Aが恐る恐る聞くと、空野さんは曖昧な返事を返した。
まぁ確かに、骨折か捻挫かなんて、見た目だけじゃわからないからな…
水川「少し、足を見せてくれますか」
すると珍しく、水川さんがそう尋ねた。
Aはビクッと反応し、俺のユニフォームの袖を掴むと水川さんを見てゆっくり頷く。
……怖がってるのか、水川さんの事。
元々人は苦手だし、あまり話した事ないし、Aが怖がるのも無理はないけど。
水川「…骨折や捻挫はしてないようですね……奇跡的に」
水川さんは腫れている部分を少し触り、 間を置いてからそう言った。
……本当かよ?
葵「水川さん、わかるの?」
水川「ええ。とりあえず、大怪我はしてないようね」
空野さんはその言葉に安堵の溜息を吐き、Aの引きつった表情も少し緩んだ。
野咲「良かったー!」
好葉「Aちゃん…」
井吹「ったく…驚かせるなよな…」
周りに集まっている皆も安心したように息を吐き微笑んだ。
葵「でも試合は出ない方がいいかもね…
これ以上酷くなったら大変だもん」
A「…え…?」
瞬木「それがいいよ。
悪化したらAも困るだろ?」
A「…」
Aは俯き、少しの思い留まると口を開いた。
A「私……まだ、試合出る」
瞬木「え……?」
その言葉に俺だけで無く、その場にいた皆が驚いた。
A「私…まだ、闘いたい。
次は、絶対…失敗なんて、しないから」
葵「でもAちゃん、足…」
A「骨折も捻挫もしてないなら…大丈夫、だよ。
だから…試合、出させて」
試合に出る事をあんなに怖がっていたのに
Aは「どうしても」と試合に出たがった。
どうして…?
いやどうしたんだ、A…?
A「彼奴らに……力を…見せつけなくちゃ…」
瞬木「…!?」
Aが不意に呟いた一言。
多分、皆は聞こえなかっただろう。
だけど、俺には聞こえた。
しかも今まで聞いた事がない、ドスのよく効いた声で。
瞬木「A…?」
A「…」
くせ毛の混じった髪の隙間から
一瞬だけ見えた彼女の横顔は
とても、怖かった。
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くにとび(プロフ) - こんばんは~ (2014年9月11日 20時) (レス) id: 8081e2eb22 (このIDを非表示/違反報告)
美薫(プロフ) - 続編おめでとう御座います(T_T)更新、楽しみに待ってます(`∇´ゞ頑張って下さい(^o^)/ (2014年6月23日 22時) (携帯から) (レス) id: c09d542fe6 (このIDを非表示/違反報告)
狩屋ハルカ - 続編おめでとうございます!応援してます!頑張ってください! (2014年6月23日 16時) (レス) id: b968f3be84 (このIDを非表示/違反報告)
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