○掌○ ページ28
「…俺の服を貸してやろう」
頭の中で思案した結果、そんな回答が導き出された。
俺の服は濡れていないし、
サイズも少し大きめのはずだから着れるはずだ。
「…へ？」
俺の提案にAは目を丸くさせると、
瞬きを数回させてから苦笑した。
「大丈夫だよ、ゴウセル？
そんな事したら、ゴウセル風邪引いちゃうよ？」
「それはAにも等しく言える。
寧ろAの方が可能性が高い」
「私ならいいの！
風邪引いてもすぐ治るし！」
「だが治るまでの間はAが苦しむ」
「だ、大丈夫だもん！
お薬飲んで寝れば苦しくないもん！」
俺が何と言おうとAは断固として拒否し続けた。
だが彼女に風邪を引かれては困るので、俺は構わず上衣を脱ぐ。
するとAは「キャアッ？！」と甲高い悲鳴をあげて、此方に背中を向けた。
「な、なな何でいきなり脱ぐのーー！！」
Aは耳まで真っ赤にさせ、目を両手で覆いながらそう言った。
……そろそろ慣れて欲しい。
俺はそんな彼女に近付き、上衣を上から被せて無理矢理頭を通した。
案の定Aはバッと振り返り、驚いた顔をして一歩後ろに下がった。
「ご、ゴウセル…！！」
「俺のことは気にするな。
俺は病気にはならない」
「……え…？」
また何か言おうとするAの言葉を遮ってそう言うと、
Aは大きな瞳を見開き、声を漏らした。
「……病気に……なら、ない…？」
「ああ、そうだ」
「……本当に…？」
「そうだが？」
「……」
Aは目をパチパチと瞬きさせ、少しの間考えるような素振りを見せると、右腕だけ俺の服に袖を通す。
そしておもむろに、彼女は右掌を広げて顔の前になる高さまで掲げた。
「…？」
行動の意味がよくわからず、とりあえず彼女を真似てみる。
するとAは掌をゆっくりと俺の掌に向かわせた。
その時の表情は強張っていて、それでいて真剣だ。
……彼女は何がしたいのだろうか？
俺の手に触れたいのか？
今まで、触れようとはしなかったのに？
…わからない。
人間の心は、わからない。
だが彼女の行動を真似すればわかるかもしれない。
心というものが、少しはわかるかもしれない。
俺はAと同じように、ゆっくりと彼女の掌に向かって自身の掌を向かわせる。
するとAは驚いた顔をして、パッと手を引っ込めてしまった。
Aは気不味そうに俺から目をそらし、掌を握りしめる。
…違った、のか？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鹿野伊愛(プロフ) - むり。この物語好きすぎて無理しにそう。神か、神なのかあなたは (2016年9月21日 15時) (
レス) id: 4b8e363bf2 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - みょんさん» コメントありがとうございます！！ め、目から塩水っ……？！そんな、僕の書く小説は人体に危険を及ぼすものだったのk(((( ですよね、ゴウセル可愛いですよねっ！！(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) 更新頑張ります(｀･ω･´) (2015年8月14日 0時) (レス) id: b02a163c50 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - 綺水。さん» 初めまして、コメントありがとうございます(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) いやいや、そんな、ゴウセルのキャラブレブレな気がするのですが……orz 更新、頑張ります！！ (2015年8月14日 0時) (レス) id: b02a163c50 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - アヤさん» だよね、ゴウセル可愛いぃぃぃい((( しかし僕はその可愛さを伝えられていないぃぃぃいいい(((゜Д゜；)))← (2015年8月14日 0時) (レス) id: b02a163c50 (このIDを非表示/違反報告)
みょん - い……目から塩水が……←とっても感動しました！ゴウセル可愛い(更新(頑張って下さい！ (2015年8月13日 0時) (レス) id: ecb616bc75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
