サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ8)

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みんなついてる【カラ松】ページ8

突然だが、私の友人であるあの六つ子の松野兄弟が死んだ。

しかも次男のカラ松を除いて、だ。

なんでも6人で旅行に行くとかで車に乗って向かったらしいんだけれど
途中で交通事故にあって、彼等が乗ってた車がぺしゃんこになったんだとか。

その時、その生き残った1人は後部座席の窓側に座っていて
その窓から運良く投げ出されて無事だったんだとか。
まぁ、怪我はしたみたいだけれど。

「俺は……俺は…どうして俺が……」

それから1週間、彼はこの調子だ。

いつものイタイ台詞もイタイポーズもしてこない。
それどころか哀愁漂ってて、ブツブツうわ言のようにひたすら呟いてて、目も虚ろ。
頭だって、あんなに気を使っていたのに今では一松以上にボッサボサだ。

「…そんな自分を責めないでよ。
兄弟皆悲しんでる」

「でも……でも俺は…俺は……！」

カラ松は頭を抱えて『俺は』と何度も繰り返す。

神様は酷い奴だ。兄弟を1人残すだなんて。
もう1人同じ顔の奴が彼のそばにいて、悲しみを分け会えたら、どれだけまだ気が楽か。

私は溜息を吐くと、恨めしそうに握られた拳をそっと包み込むように握る。
すると彼は一瞬呼吸が止まると、ゆっくりその拳を解いていった。

あーあー…爪が食い込んで血が出てら。

これで何度目かな。いつも注意してるのに。

「…カラ松、お前は何も悪くないんだよ。
皆もそう思ってる」

「………俺は…どうして俺だけが……
あの時、違う奴に…席を譲ってやってれば…」

「だから、誰もアンタの事責めやしないって」

「何で……何で俺だけっ…！！
皆、いなくなるなら……せめて、俺も連れてってくれれば…良かった、の、に……！」

「………」

…ダメだ、彼には私の言葉は届かない。

ほら、今のお前の言葉を聞いて〝皆〟悲しんでるぞ。
つか〝皆〟泣いてるぞ。

「………ごめんね」

私は誰に言うでもなく謝ると、カラ松の背中に腕を回した。
カラ松も弱々しく私の首に腕を回し、少しすると声を殺して泣き始めた。

すると彼の周りにいた〝皆〟も彼に身を寄せるように集まり、同じように涙を流す。

……大丈夫だよ、カラ松。
アンタは1人じゃない。

だってアンタにはまだ〝兄弟〟が憑いてるんだから。