サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ21)

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「へっ……？」

一瞬何が起きたのかわからなくって、私は彼に抱き着いたまま固まった。

そしてそっと彼の背に回していた手を首元に持っていき、その違和感の原因に触れる。

これって……首、輪……？

「ああ…俺も愛してるぜ、my sweet honey…」

首元に何故首輪が巻かれているのか。

カラ松に尋ねようと思ったが、その前に彼はそう言って私を抱き締めた。

「か、ら…松…？」

「やはり俺達は相思相愛…honeyも俺と同じ気持ちだったんだな」

「ねぇ、カラ松…？この首輪…」

「ならば早速、向かおうか。
俺達だけの理想郷(ユートピア)…ずっと2人でいられる所へ」

そして耳元でそう優しく囁くと、彼は1度私から身を離し、いつものように微笑んだ。

その微笑みは本来ならば私を安心させてくれるのに
この時ばかりは、狂気を感じた。

「…おっと、その前に指輪をはめないとな」

ふとカラ松は思い出したかのように黒い箱から指輪を取り出すと
そっと私の左手を取って、薬指に通す。

私はソレを、ただ見ている事しか出来なかった。

「いっ…！い、痛い！痛い痛い痛いっ！！」

だが指輪は私の指のサイズに対して少し小さいようで、第二関節辺りで通らなくなってしまう。

それをカラ松は無理矢理通そうとするものだから、当然痛みを感じるわけで。

「すまなかったな。
この指輪を大切にしてもらいたくって、少し小さめのサイズを購入したんだ。

これなら容易に外す事は出来ないだろう？」

薬指の激痛を乗り越え、やっと奥まで指輪を通すと彼は満足げに微笑んでから、私の手を引いた。

「さぁ、早く行こう。誰にも邪魔されない所へ。
そこには今あげたソレとはまた別の首輪(ネックレス)も手錠(ブレスレット)もあるんだ。

勿論、ちゃんと生活出来るように家具は揃えてあるし、服だって…」

ああ、何処で間違ってしまったんだろう。

どうして彼はこうなってしまったんだろう。

彼に手を引かれ、彼が用意したと言うワンボックスカーにゆっくり足を踏み入れながら、私はもうこの街には戻れないんだと察した。