グノーシア短編集＊LOOP3＊ (ページ10)

今日:15 hit、昨日:6 hit、合計:5,850 hit

黒毛のキミは【シピ】ページ10

・シピはやっぱり猫が好き
・捏造多め

－－－

癖の付いた、夜のような黒髪。

それはまるであいつのようで。

それが目の前にあったから。

あいつが、目の前にいたようだったから。

俺は思わず、手を伸ばした。

「っ……？！」

……気が付いた時には、目の前の彼女は怯えた顔して俺を見上げていた。月みたいな黄金色の目をかっぴらいて、ビクッと肩を震わせる。

それもそうだ。俺は体もデカいし、何より今この船の中でグノーシアが出てるんだ。
そんな状態で、何にも言わず、急に頭に触れようとするなんて。怖いよな。嫌だよな。

俺はすぐ手を引っ込めた。

「……悪い。お前の髪が、あいつに似てたからよ」

慌てて弁明したが、やはり疑われているようだった。途端に眉を眇られ、俺は苦笑いを浮かべると、彼女は気になったのか首を傾げて「あいつ？」と俺に尋ねた。

「ああ、俺が住んでた星にいたんだ。凄くキレイな黒毛でよ」

「ま、もう会えねーんだけどな」と付け足すと、彼女は眉を下げて悲しそうな顔をする。表情が忙しいやつだ。

そういえば……あいつの瞳も丁度、彼女と同じ色だったな。

真っ黒な毛並みに、満月のような2つの瞳。
気紛れで、好奇心旺盛で、でもちょっと臆病で。

だから、あいつとは中々仲良くなれなかった。

「どうして、会えなくなったの？」

「さぁ……どうしてだろうな」

「シピはその子の事、好きなの？」

「……あぁ、大切だ」

「……やっぱり今も、会いたい？」

「………………あぁ」

素直に零す。会いたい。会いたいに決まってる。

でも、もう会えない。