グノーシア短編集＊LOOP3＊ (ページ44)

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「ど、どうしたんだ、ジナ？なんか食いに来たのか？」

とりあえずこれ以上笑われる前に俺は疑問を口にすると、ジナは「うん」と頷き、手元を見せる。

するとそこにはみたらし団子が刺さった串が6本。綺麗な山を作って皿に乗っていた。時間的にも確かにおやつの時間だしな。ジナはみたらしに目がないから珍しい事でもない。

「食べる？」

「いや、大丈夫。お腹空いてないし」

「でも、何かブツブツ言いながら考えてた。
甘い物は、頭の栄養」

「……」

……俺がなんかブツブツ言ってたの聞かれてたのかな。
やっべ、変な事言ってないといいケド。

数秒前に自分がなんて言ってたのかさえ朧気で、だから内心ヒヤヒヤしてた。そんな俺の間抜け顔を見てジナはまた笑うと、みたらし団子の乗った皿をこちらに寄せた。

「どうぞ、食べて」

「……でもコレ、ジナが食べたくて持って来たんじゃ？」

「大丈夫。まだ、みたらし団子は沢山、ある。
それに、Aは疲れてるみたい」

「そ、そう見える？」

「目の下のクマ、酷いよ」

「……マジか」

……流石にクマまで出来てるとは思わなかった。
あぁ、やっぱり毎朝鏡は見るべきなんだな。

ここまで見破られたのなら仕方ない。
ジナもいいよって言ってくれてるし。俺はみたらし団子を1本手にすると、1つ口にする。

もちもちのお餅に甘じょっぱいみたらしが絡んで美味しい……と言うか久々に食べた気がする、こういう食べ物。最近はずっとコーヒーとレーションばっかだったから。

ぼんやりそんな事を考えながら1つ、もう1つと夢中になっていたら、あっという間に1本食べ終えてしまった。

1度コーヒーで口の中リセットしてから、もう1本食べようと手を伸ばしたら、ふとジナが口を開いた。

「そう言えば、」

「ん？どした？」

「疲れてる時は、ハグをするといいって」

「………………うん？」

あれ、俺寝ぼけてるのかな？

思わず団子の串を持ったまま固まると、ジナは少し照れくさそうに俺から目をそらし、言葉を付け足した。

「……沙明が、言ってた」

「沙明が」

「そう、沙明が」

……多分、いつもみたいに口説く調子で言ったんだろうな。存在しないはずの記憶なのに、なんかその光景が鮮明に浮かんだ。

でもどうして急にそんな事を思い出したんだろう？
俺が疲れてるって察したから？
確かに疲れてはいるけれど……ハグなんかでどうにかなるモンなんだろうか。