彼にはただの夢だった【沙明】 ページ41
・ループが終わり船から降りた後の話
−−−
夢を見た。
グノーシア騒動で乗り込んだ船の乗員が、グノーシアに消される夢だ。
毎日、着実に1人ずつ消されるものだから、日に日に集まる人数も少なくなり、遂にアイツと2人きり。
そうしたら彼女は笑うんだ。
真っ赤な瞳で笑って、それで。
俺の方に手を伸ばして、彼女は____
−−−
「っ…」
ふと、目が覚める。嫌な夢だった。
でもいつも通りの部屋の様子と、聞こえるもう1つの寝息を聞いてホッと胸を撫で下ろす。
ちらり。視線を少し下げればそこには愛しのマイエンジェル。Aが俺の腕の中ですぅすぅ気持ち良さそうに眠っていた。
そんな彼女のお腹に巻き付けていた腕に軽く力を入れ、抱き寄せると、彼女は「ん…」と艶っぽい声を漏らしてまた寝息を立てた。
あぁ、あったけェ…この人肌はいつでも俺を安心させてくれる。オマケにふわふわのスベスベの俺好みのイイ匂いで…あー、ダメだ。これ以上は想像したらおっ立っちまう。
「(あー……もうAナシじゃ生きてける気がしねーわ、マジで)」
あんまりにも愛おしくて。あんまりにも愛らしくて。
後頭部に軽くチュッと口付けを。その内チュッチュッと何度も何度も。
その内髪の隙間から覗く
ふと、先程見た夢を思い出す。
真っ赤な瞳で不気味に笑って、俺に手を伸ばすA。
どうしてあんな夢を見てしまったんだろう?
ルゥアンでの騒動は結構俺の中でトラウマだったりするのだろうか?
まぁ、確かに古臭いゾンビ映画のようにあっちこっちにグノーシアがいたあの光景は忘れられそうもない。
セツがいなけりゃ今頃俺は消されてただろう。
しかし、それにしたって意地の悪い。
よりにもよってAがグノーシアになる夢だなんて。
「(Aがグノーシアになったら……はは、AC主義者にでもなっちまおうかな)」
そんな事を半分冗談で考える。
気付いたら彼女を抱く腕に力が込もってしまっていた。
丁度そのタイミングで6時を告げる目覚ましが鳴り響く。
Aはゆっくり瞼を上げると、もぞとぞと俺の腕の中で身動ぎしてから「くるしい……」と呟いた。
「グッモォニィング、俺のシュガーちゃん?」
「沙明……苦しい……」
「おっと、悪ィ悪ィ」
言われて俺は腕の力を緩めるが、離す気はなかった。
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